怪談雪女郎

『怪談雪女郎』は、1968年4月20日に公開された大映製作の映画です。田中徳三が監督を務め、藤村志保が主演の雪女を演じました。本作は、日本の伝説的な妖怪である雪女を題材にしたホラー作品ですが、そのストーリーは単なる恐怖だけでなく、人間の感情の機微や切ない愛の物語をも内包しています。

物語は、仏師の与作が雪女に師匠を殺される場面から始まります。しかし、与作は雪女から「このことを誰にも話さない」という条件で命を助けられます。その後、与作は師匠の代わりに国分寺の本尊を彫ることになり、その過程で「ゆき」という女性と出会い、夫婦となります。しかし、ゆきに横恋慕する地頭の嫌がらせによって、与作は窮地に陥ります。そんな中、ゆきは雪の力を使って与作を救います。ゆきの姿に雪女の面影を見た与作は、過去の出来事をゆきに話してしまいます。約束を破ったことで雪女は怒り、豹変しますが、夫婦として過ごした日々や子供の存在によって怒りを鎮め、与作に子供を託して姿を消します。

この映画の魅力は、雪女という妖怪を単なる恐怖の対象として描くのではなく、人間的な感情を持つ存在として描いている点にあります。雪女の悲しみや愛、そして葛藤が、観る者の心を深く揺さぶります。また、映像美や音楽も素晴らしく、特に伊福部昭による音楽は、作品の雰囲気を盛り上げ、観客を物語の世界へと引き込みます。

主な出演者は以下の通りです。

ゆき：藤村志保
与作：石浜朗
奥方：長谷川待子
美濃権守：内藤武敏
惣寿：須賀不二男
成尋：北原義郎
そよ：村瀬幸子
松川：北城寿太郎
巫女：原泉
茂朝：花布辰男
医師：沖時男、藤川準
番卒：堀北幸夫
取次の男：越川一
太郎：斎藤信也
行慶：鈴木瑞穂
慈雲：清水将夫

スタッフは以下の通りです。

監督：田中徳三
脚本：八尋不二
企画：久保寺生郎
撮影：牧浦地志
編集：山田弘
美術：内藤昭
* 音楽：伊福部昭

併映作品として、池広一夫監督の『ひとり狼』があります。

『怪談雪女郎』は、ホラー映画としてだけでなく、人間ドラマとしても楽しめる作品です。雪女の悲哀、そして夫婦の愛の形を描いた本作は、観る者の心に深く残るでしょう。

もう一度検索