悪名無敵

『悪名無敵』（あくみょうむてき）

1965年10月27日に日本の映画製作会社である大映株式会社によって全国公開された劇映画です。この作品は、今東光の原作小説をもとに、架空の人物である朝吉と清次という二人の渡世人（とせいにん）の活躍を描く『悪名』シリーズの第11弾として製作されました。当時の日本映画界において、特定の主人公とその仲間たちの冒険を追いかけるシリーズものは人気を博しており、『悪名』シリーズもその代表格の一つでした。本作は、シリーズが佳境を迎えていた時期に世に送り出された、任侠をテーマにした娯楽作品です。

製作陣営

本作の製作には、当時の大映京都撮影所が誇る一流のスタッフが多数参加しています。

監督を務めたのは、シリーズ作品を多く手掛け、その豪快かつ人情味あふれる演出で知られる田中徳三です。彼はこのシリーズの雰囲気を熟知しており、主人公たちの魅力を最大限に引き出しました。
脚本は、日本映画史に残る名作を数多く手がけた依田義賢が担当しました。原作の世界観を踏まえつつ、映画独自の物語やキャラクター描写を構築しました。
企画は財前定生。
撮影は、光と影の魔術師と称される伝説的なキャメラマン、宮川一夫が手掛けました。彼の映像美が、任侠世界の空気感や登場人物の感情を見事に描き出しています。
美術は内藤昭。
音楽は鏑木創。
編集は山田弘がそれぞれ担当し、各分野のプロフェッショナルが一体となって本作を創り上げました。

出演者たち

物語の中心に立つのは、シリーズを通して不動の主人公である勝新太郎が演じる朝吉です。明石の石五郎を親分に持つ朝吉は、その名の通り「悪名」を轟かせながらも、義理人情に厚い魅力的なキャラクターです。そして、朝吉の無二の相棒として常に傍らに控えるのが、田宮二郎演じる清次です。クールで知的ながら、いざとなれば朝吉と共に命を懸ける清次は、シリーズに欠かせない存在であり、田宮二郎の当たり役となりました。

二人の強力なタッグに加え、物語に彩りを添える共演者たちも豪華な顔ぶれです。

八千草薫が朱美役。
藤村志保は百合子役。
千波丈太郎は常公役。
戸田皓久は横川役。
春本富士夫はマッサージの親爺役。

これらの主要キャストに加え、物語の舞台となる世界を生き生きと描く多彩な俳優陣が多数出演しています。

勝村淳（若い者）
北野拓也（ポン引）
西岡弘善（大阪の若い者）
志賀明（請負師の若い者）
大杉潤（職人）
平泉征七郎（バーテン）
久本延子（仲居）
大杉育美（お君）
高木峯子（売春宿妾）
山岡鋭二郎（やくざ）
藤岡琢也（磯辺）
水原浩一（親分）
* 花澤徳衛（元締）

彼らが演じる様々な人物たちが、朝吉と清次が巻き込まれる事件や騒動に関わり、物語を多角的に展開させます。

シリーズにおける位置づけと同時上映

本作『悪名無敵』は、1961年に始まった『悪名』シリーズのちょうど中盤にあたる第11作目として製作されました。既にキャラクターや世界観は確立されており、マンネリに陥ることなく新たな展開や強敵を描き出すことが求められる時期の作品と言えます。しかし、主演二人のケミストリーとスタッフの高い技術力により、シリーズの人気を維持し、さらなるファンを獲得することに貢献しました。

また、本作は公開当時、村山三男が監督を務めた『学生仁義』と二本立てで上映されました。当時の日本映画興行における定番であった二本立て興行の一環として、異なるジャンルの作品と併映されることで、幅広い層の観客にアピールしました。

『悪名無敵』は、タイトルの通り、困難に立ち向かう朝吉と清次の「無敵」とも言える活躍を通じて、任侠の世界における男の生き様や、固い友情の絆を描いた作品です。

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