悪魔の落とし子

ブラック・サバス『悪魔の落とし子』(Born Again) 詳細解説

『悪魔の落とし子』は、1983年にブラック・サバスが発表した11枚目のスタジオ・アルバムです。ロニー・ジェイムス・ディオの脱退後、元ディープ・パープルのイアン・ギランを新たなボーカリストに迎え、オリジナル・ドラマーのビル・ワードが復帰したことで話題を呼びました。しかし、その音楽性とジャケット・デザインは、賛否両論を巻き起こすこととなりました。

制作背景

ロニー・ジェイムス・ディオとヴィニー・アピスの脱退後、ブラック・サバスは新たな道を模索しました。そこで白羽の矢が立ったのが、当時人気絶頂だったディープ・パープルの元ボーカリスト、イアン・ギランでした。ギランの加入は、バンドに新たな可能性をもたらすと期待されました。また、オリジナル・ドラマーであるビル・ワードの復帰も、往年のファンにとっては嬉しいニュースでした。

音楽性

本作は、従来のブラック・サバスのイメージとは異なる、実験的なサウンドが特徴です。ギランのブルージーなボーカルスタイルと、アイオミのヘヴィなギターリフが融合し、独特の音楽性を生み出しています。しかし、その音楽性は、従来のファンからは「ブラック・サバスらしくない」と批判されることもありました。

収録曲「キープ・イット・ウォーム」は、当時のギランのガールフレンド（後に妻となる）に捧げられています。

ジャケット・デザイン

本作のジャケット・デザインは、デザイナーのスティーヴ・"クラッシャー"・ジョールが、雑誌に掲載された赤ん坊の写真を加工したものです。このジャケットは、その悪趣味さから賛否両論を呼びました。トニー・アイオミやマネージャーのドン・アーデンは気に入ったものの、ギランは嫌っていたと言われています。

評価

本作は、音楽評論家からの評価が分かれています。Allmusic.comのEduardo Rivadaviaは、5点満点中1.5点という低い評価を与え、「ギランのブルージーな歌唱法は、サバスの音楽に合わない」と批判しました。一方、メタリカのラーズ・ウルリッヒは、本作を「発表当時は嫌われたが、今ではサバスのアルバムの中でも特に崇拝されているものの一つ」と評価しています。

ツアー

ビル・ワードは、本作に伴うツアーには参加せず、代わりにエレクトリック・ライト・オーケストラのベヴ・ベヴァンがドラムを担当しました。ツアーでは、ギランが在籍していたディープ・パープルの楽曲「スモーク・オン・ザ・ウォーター」も演奏され、話題を呼びました。ツアー終了後、ギランはディープ・パープルの再結成に参加するため、バンドを脱退しました。

その後

ギランは、自身のソロ・アルバム『ギランズ・イン』で、本作収録曲「トラッシュド」をセルフ・カバーしました。このバージョンには、トニー・アイオミも参加しています。

2011年には、未発表曲「ザ・フォールン」や、「ストーンヘンジ」のエクステンデッド・バージョン、そしてレディング・フェスティバルでのライブ音源を収録したデラックス・エディション盤が発売されました。

『悪魔の落とし子』は、ブラック・サバスの歴史の中でも異質な作品として、今もなお議論の的となっています。しかし、その実験精神と、イアン・ギランの個性的なボーカルは、唯一無二の魅力を放っています。

収録曲

1. トラッシュド
2. ストーンヘンジ
3. 邪神
4. 暗黒
5. ゼロ・ザ・ヒーロー
6. デジタル・ビッチ
7. 悪魔の落とし子
8. ホット・ライン
9. キープ・イット・ウォーム

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