愛の神話

郷ひろみ『愛の神話』：バラードと抒情が織りなす、成熟した歌声

1982年12月21日、CBS・ソニーよりリリースされた郷ひろみ19枚目のオリジナルアルバム『愛の神話』。前作『THE BEST 郷ひろみ』から約一ヶ月という短いスパンでのリリース、オリジナルアルバムとしては『哀愁のカサブランカ』から三ヶ月ぶりの作品となります。

本作の特徴は、バラード調の楽曲やカバー曲が中心に構成されている点です。郷ひろみの甘い歌声と、情感豊かなメロディーが、リスナーの心を深く掴む作品となっています。さらに、『街かどの神話』以来、実に12作ぶりとなる自身のオリジナル曲が収録されていることも大きな話題となりました。これは、郷ひろみにとって単独名義での初の自作曲ということもあり、彼の音楽家としての成長を象徴する出来事と言えるでしょう。

アルバムはオリコンチャートで初登場9位を獲得。前作に続くトップ10入りを果たし、彼の変わらぬ人気を証明しました。収録されている楽曲は、いずれも選りすぐりの名曲揃い。フリオ・イグレシアスや、その他著名な作曲家、作詞家たちが手がけた楽曲が、郷ひろみによって日本語詞で歌い上げられています。

アルバムのリード曲である「愛の神話」は、山上路夫による作詞、川口真による作曲・編曲で、郷ひろみの甘い歌声が最大限に活かされたバラードです。そして、44thシングルとして既にリリースされていた「哀しみの黒い瞳」も収録されており、アルバム全体の完成度を高めています。

その他にも、ジャンニ・ベルフィオーレや、マヌエル・デ・ラ・カルバといった海外アーティストの作品を日本語詞でカヴァーした楽曲も複数収録。これらの楽曲は、郷ひろみ独自の解釈によって新たな魅力が加えられ、新鮮な驚きを与えてくれます。

『愛の神話』は、郷ひろみ自身の楽曲「愛の場面」を含む全10曲を収録。参加ミュージシャンも豪華な顔ぶれが勢揃い。ギターには吉川忠英、芳野藤丸、今剛といったそうそうたるメンバーが参加し、キーボードには山田秀俊、難波弘之といった実力派ミュージシャンが名を連ねています。他にも、パーカッション、ストリングス、ブラスセクションなど、多様な楽器が駆使され、楽曲に奥行きを与えています。

このアルバムは、郷ひろみのこれまでのキャリアを凝縮したような作品であり、バラードを中心とした彼の音楽性の深さを改めて感じさせてくれます。そして、単独名義での初の自作曲「愛の場面」は、彼の音楽家としての新たな一面を示し、今後の活動にも期待を持たせるものとなっています。バラード好き、郷ひろみファン、そして80年代音楽を愛するすべての人々にとって、必聴のアルバムと言えるでしょう。

主な収録曲

さすらい夢人
愛の神話
哀しみの黒い瞳
狂おしきマドリー
白い伝説
愛と青春の旅だち
悲しい悪魔
愛の場面
BABY, IT'S YOU
さらばわが愛

これらの楽曲は、それぞれの作詞作曲家、そして日本語訳詞家の手腕によって、普遍的なテーマである愛、別れ、そして人生の儚さを表現した、心に響く名曲揃いです。郷ひろみの表現力豊かな歌声と、豪華なミュージシャン陣の演奏が一体となり、聴く者を深い感動の世界へと誘います。1982年当時の音楽シーンを代表する一枚として、現在でも高い評価を受けているアルバムです。

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