愛知電気鉄道電6形電車

愛知電気鉄道電6形電車

愛知電気鉄道電6形電車は、名古屋鉄道の前身である愛知電気鉄道が1924年から1925年に導入した電車です。この形式は制御電動車であり、高速運転に特化した設計がされており、当時新設された豊橋線（名鉄名古屋本線の一部）がその背景にあります。

導入のいきさつ

愛知電気鉄道は、有松線の延伸に続いて、1922年に豊橋線の建設を開始しました。この路線は名古屋市と豊橋市を直線的に結ぶことで、都市間高速交通の実現を目指したものです。豊橋線は、特に速達性を重視した設計で、運行速度60km/hを目指していました。このためにドイツから輸入した重軌条や、三位色信号機といった高規格な設備が導入された。また、電6形の登場前には、既存の有松線区間においても運行の高速化と電圧の昇圧が進められました。

1924年に導入された大正13年型（デハ1060 - デハ1064）は、高速運転に対応した高出力の主電動機を備え、さらに後の大正14年型（デハ1066 - デハ1074）では電圧転換器が省略された仕様が採用されました。これにより、合計14両の電6形が愛知電気鉄道に導入されました。

車体の特徴

電6形は全長16,028mm、全幅2,642mmの木造車体を採用し、デザインも従来の電5形と似通った面を持っています。車両の前後妻面は平面形状で、711mm幅の前面窓が3枚並んでいるスタイルが特徴です。運転台は両端に設けられ、車両の両側には片開きの客用扉が設置されています。これにより、乗降がスムーズに行える設計となっています。

内部はロングシート仕様で、全体定員は108人、座席定員は38人に設定されています。照明には直流120Vの白熱灯が24個設置され、非常に明るく保たれています。複電圧対応の大正13年型では、架線の電圧に応じて照明回路が切り替わる仕組みがあり、これは非常に合理的な設計です。

主な機器と性能

電6形では主電動機に芝浦製作所製の国産品が採用され、その出力は従来の車両よりも約1.5倍に強化されています。また、制御装置は愛電標準のウェスティングハウス・エレクトリック製のものが使われ、高圧電圧下での動作の信頼性が考慮されています。主電動機は4基搭載され、走行時の加速性能向上に寄与しています。

台車にはブリル製の鍛造鋼製の釣り合い梁式台車が採用されており、固定軸間が2,134mmであるため、高速運転時における安定性を確保しています。これにより、当時としては先進的な性能を実現しました。

運行の歴史

電6形が導入された後、特急列車として運用されるようになり、旧愛電の路線や他の相互直通区間でも活躍しました。1935年には名岐鉄道との合併により名古屋鉄道が発足し、電6形もその運用に継承されました。その後、形式名が変更され、モ1060形、モ1070形として長い間使用され続けました。

戦後、新型車両の導入や架線電圧の統一が進む中、木造車体の老朽化が問題となり、最終的にはモ1060形とモ1070形は1958年と1959年にそれぞれ形式が消滅しました。

まとめ

愛知電気鉄道電6形電車は、その設計と性能によって当時の鉄道技術を先取りした存在でした。新しい交通網の一翼を担ったことは、名古屋鉄道の歴史の中でも重要な役割を果たしたといえるでしょう。

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