懿宗 (唐)

懿宗（いそう）

懿宗は、唐朝の第20代皇帝であり、宣宗の長男として生まれました。しかし、その治世は唐朝衰退の始まりを告げるものでした。

生涯

初名は温といい、鄆王、後に汴王に封じられました。宣宗は当初、雍王李渼を皇位継承者と考えていましたが、李渼が早世したため、庶長子である李温を立てることを検討しました。しかし、李温があまりにも暗愚であったため、宣宗は決断を躊躇しました。大中13年（859年）に宣宗が危篤に陥ると、宦官が独断で李温を擁立し、懿宗として即位することになりました。

史書によれば、懿宗は落ち着いて穏やかな性格で、容姿にも優れていたとされます。また、音楽にも長けていましたが、遊興に節度がなく、酒色に溺れて政務を疎かにしました。即位後は宦官に政治を委ね、その結果、地方の藩鎮が勢力を拡大し、各地で農民反乱が頻発するようになりました。即位した初年には浙東で裘甫の乱が起こり、咸通9年（868年）には徐州・泗州を守備していた兵士たちが桂林への移転に不満を抱き、龐勛の主導で反乱を起こしました。

懿宗は仏教を深く信仰し、咸通14年（873年）春には、大臣たちの反対を押し切って、莫大な費用をかけて仏骨を迎える儀式を強行しました。当時の翰林学士であった劉允章は『直諫書』を引用し、「国家を崩壊させる九つの要素」を指摘し、政治の混乱ぶりを批判しました。また、『唐人伝奇』や『太平広記』には、正式な手続きを経ない便法的な売官が懿宗の治世に盛んに行われていたことが記されています。

懿宗の崩御から2年後に発生した黄巣の乱は、唐朝に回復不能な打撃を与え、滅亡へと向かわせる大きな要因となりました。

新羅の景文王は咸通3年（862年）7月に使者を派遣して貢物を献上し、これに対し咸通6年（865年）4月に懿宗は景文王を〈開府儀同三司・検校太尉・使持節大都督・鶏林州諸軍事・上柱国・新羅王〉に冊封しました。

宗室

側室：王貴妃（贈恵安皇后）
五男：普王 李儼（僖宗） - 第21代皇帝
側室：王宮人（贈恭憲皇后）
七男：寿王 李傑（昭宗） - 第22代皇帝
側室：郭淑妃
皇女：同昌公主
側室：楚国夫人楊氏、婕妤崔氏、婕妤王氏、雷氏
生母不詳の子女
皇子：魏王李佾、涼王李侹、蜀王李佶、咸王李侃、吉王李保、睦王李倚
皇女：安化公主、普康公主、昌元公主、昌寧公主、金華公主、仁寿公主、永寿公主、遂寧公主

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