成瀬正武

成瀬正武の生涯とその後

成瀬正武（なるせ まさたけ）は、戦国時代における徳川家の有力家臣であり、その活躍は多くの人々に記憶されています。彼は成瀬正一を父に持ち、母は山上氏という家庭に生まれました。

仕官と昇進

正武は、6歳の頃に2代将軍・徳川秀忠に仕官し、小姓としてのキャリアをスタートさせました。彼はその後、花畑番（四番紫幌組）の番頭に昇進し、5000石の領地を与えられるに至ります。この時期の小姓組には、水野忠元、井上正就、板倉重宗、日下部正冬、大久保教隆といった他の有力な家臣も名を連ねました。

慶長10年（1605年）、徳川秀忠が将軍として宣下される際、正武は随身として12名の中に選ばれ、従五位下の位も授かったことから、その信任の厚さが伺えます。その後、正武は慶長16年（1611年）ごろから、江戸の秀忠と駿府の家康の間の連絡役を務めるようになりました。

大坂の陣への出陣

慶長19年（1614年）10月16日、家康からの密命を秀忠に伝達した正武は、その後に訪れる大坂攻めへの出陣を決意します。大坂冬の陣では、彼は後藤基次の調略を家康から命じられ、成功を収めましたが、実際に家康が応対しなかったため、説得には至りませんでした。その後の大坂夏の陣では、激しい戦闘の中で奮闘し、旗本隊が揺らぐ中でも勇敢に戦ったと言われています。

突然の切腹

しかし、正武の運命は慶長20年（1615年）に急変します。将軍秀忠の参内に随行していた際、女院に近侍する女官との密通が問題となり、安藤重信の預かりとなることから切腹を命じられました。介錯には後の栗原藩主であり、正武の甥でもある成瀬之成が関与しました。切腹の理由は記録によって異なり、明確な真相は未だに判明していません。

切腹の謎と家族の運命

成瀬正武の切腹には、様々な説が存在します。実際には、大久保派に属していたために粛清されたとの説や、密命を帯びて大坂方の脱出に関与したとの推測もありますが、真相は定かではありません。

正武の死後、残された家族は苦しい運命を辿りました。妻の於仙と子供たちは実家の飫肥伊東家を頼し、長男の成瀬祐正は父の影響を受けて多くの人々と文通を続けましたが、なかなか帰参が叶いませんでした。彼は最終的に伊東内膳祐正と改名し、密かに悲しい生涯を閉じました。

また、祐正の次男祐勝は成瀬伊織と名乗り、幕閣への帰参を目指しましたが、その道は険しく、尾張藩に仕官することに。そこで所領を与えられつつも、大名家への復帰の道は遠のいていきました。

地域のつながり

正武の家族の運命は、彼の故郷や縁のあった土地とのつながりをもたらしました。與仙の実家がある宮崎県日南市と、正武の兄正成が治めた愛知県犬山市は、姉妹都市となるなど、歴史的なつながりを築きました。これにより、成瀬家の遺産や影響も今に受け継がれています。

終わりに

成瀬正武の生涯は、戦国時代の波乱や家族の運命を描いた物語です。しかし、その真相や後日談には多くの謎が残ったままであり、歴史の中で見ると心に響く一幕となっています。

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