戒長寺

戒長寺の概要

戒長寺（かいちょうじ）は、奈良県宇陀市榛原戒場に位置する真言宗御室派の寺院で、山号は戒場山（かいばさん）です。境内には高さ約30ｍ、幹周り約4ｍの大イチョウがあり、毎年11月中旬から12月初旬にかけて美しい紅葉を見せることで、多くの人々に親しまれています。この寺院は、自然と歴史が融合した特別な空間と言えます。

歴史

戒長寺の創立に関する記録は明確ではありませんが、仁治元年（1240年）に作成された文書には「戒場寺」との名称が記されており、これが文献上の初めての言及とされています。寺の伝承によれば、用明天皇の勅願に基づいて聖徳太子が建立し、空海（弘法大師）が後に伽藍を整備したとされています。しかし、これらの記録を裏付ける文献は見つかっておらず、信憑性には疑問が残ります。とはいえ、戒長寺の境内の状況から、少なくとも平安時代後期には寺の勢いがあったと考えられており、境内下に広がる戒場集落内での発掘調査では、12世紀頃の建築物遺構が見つかっています。この発掘調査により、戒長寺の旧境内と推測される場所が確認され、歴史的な重要性が再評価されています。

仏像の宝庫

戒長寺には、数多くの貴重な仏像が所蔵されています。中でも本尊である薬師三尊は秘仏として安置されており、その姿は特に神聖視されています。具体的には、木造薬師如来及び両脇侍像（薬師三尊）や、千手観音坐像、地蔵菩薩半跏像などの仏像があり、特に薬師如来坐像は、平安時代前期の特性を示しています。これらの仏像は、寺の経歴や文化的背景を物語る貴重な財産です。

境内の魅力

戒長寺の境内は、戒場山の中腹に位置し、通常は長い石段の参道を登ることでたどり着きます。境内に入ると、すぐに立ち尽くす大イチョウの姿が目を引きます。このイチョウは特に紅葉時期に境内を黄金色に染める美しさで知られ、訪れる人々の心を捉えます。境内には他にも、五輪塔や鐘楼門、そして本堂があります。鐘楼門に設置されている銅鐘は1291年に鋳造されたものであり、国の重要文化財に指定されています。寺の歴史が息づく境内には、神仏習合の名残もあり、戒場神社と共有の空間が広がっています。

文化財と天然記念物

戒長寺はその文化財の宝庫でもあり、特に重要文化財に指定されている銅鐘は、薬師如来の眷属である十二神将像が鋳出された珍しいものです。さらに、奈良県指定文化財に登録されている薬師三尊像や薬師如来坐像は、仏教美術としても高い評価を受けています。また、大イチョウと戒場神社のホオノキの巨樹は、奈良県の天然記念物にも指定され、自然科学的にも重要な目的を果たしています。

アクセス

戒長寺へのアクセスは、近鉄大阪線「榛原駅」から奈良交通のバスを利用することができます。「玉立」行きのバスに乗れば、7分程度で到着し、その後徒歩で約40分の距離です。他にも「天満台東3丁目」行きのバスを利用し、「天満台東2丁目」バス停まで行くと、徒歩で約30分の距離となります。自然に囲まれたこの寺院は、訪れた人々に深い感銘を与える歴史的なスポットです。

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