戸山ハイツ

戸山ハイツ：歴史と現状

戸山ハイツは、東京都新宿区戸山二丁目に位置する、都営住宅を中心とした大規模な住宅団地です。都内における大規模団地の先駆け的存在であり、その歴史は江戸時代まで遡ります。

歴史

江戸時代から戦前

江戸時代、この地は尾張徳川家の下屋敷であり、「戸山山荘」と呼ばれる庭園が広がっていました。明治時代に入ると、陸軍の各種学校（陸軍戸山学校、陸軍軍医学校、陸軍幼年学校）が置かれ、軍事施設としての役割を担いました。

戦後の住宅難と戸山ハイツの誕生

第二次世界大戦中、この地域は都市計画公園として計画されていましたが、戦後、GHQの提唱により住宅難を解消するため、計画されていた公園用地の一部に越冬応急住宅が建設されることになりました。戸山公園（箱根山地区）に囲まれるように1号地から8号地に分けられ、木造平屋建ての住宅1,052戸が建設され、道路や店舗、公共施設も整備されました。
1948年には入居申し込みが開始され、約1,000戸の募集に対し、34,999件もの申し込みが殺到し、約35倍という非常に高い倍率となりました。当時の家賃は、大卒初任給の約3分の1に相当する約1,000円と高額であったため、居住者は高所得者層が中心でした。当時の公営住宅は、現在のような低所得者層向けの社会福祉的な位置づけではなく、家賃支払い能力のある勤労者層への住宅供給を目的としていました。

中高層住宅への建て替え

1960年代以降、防災・耐火性の観点から中高層住宅への建て替えが必要とされ、当初は中層住宅にする案が出ましたが、住民との意見の相違や住宅需要の増加から、1970年には33棟3,354戸という大規模な高層住宅群にする計画に変更されました。1968年から1976年にかけて、鉄筋コンクリート造の高層住宅への建て替えが順次進められ、周辺の公共施設やスーパーマーケットなども整備されました。建て替え後、戸数は3,683戸（うち都営住宅3,348戸）となりました。

現在の戸山ハイツ

現在の戸山ハイツには、都営住宅と東京都住宅供給公社の分譲住宅が混在しています。

課題

2024年4月時点で、約3,000世帯が入居していますが、高齢化率は5割を超えています。居住者の高齢化や単身世帯の増加は、他の都営住宅と同様に深刻な問題です。建て替え前の平屋住宅時代から住んでいる居住者も約1割おり、長年にわたりこの地で生活を続けている人が多くいます。高齢者のいる世帯が全体の約6割を占め、高齢者の単身・夫婦のみ世帯も約4割にのぼります。また、高層住宅への建て替えから約50年が経過し、建物の老朽化も指摘されています。

周辺環境

戸山ハイツの周辺には、以下の施設があります。

戸山公園
箱根山 (新宿区)
国立国際医療研究センター
東京都立戸山高等学校
学習院女子大学
東京女子医科大学
東京女子医科大学病院
早稲田大学（西早稲田キャンパス、戸山キャンパス）

交通

戸山ハイツは広大な敷地を持つため、棟によって最寄りの駅が異なりますが、いずれも徒歩10分程度です。利用可能な駅は以下の通りです。

東新宿駅
若松河田駅
西早稲田駅

また、都営バスも利用可能で、新宿駅、大久保駅、高田馬場駅、渋谷駅、池袋駅などからアクセスできます。

事件

1978年には、戸山ハイツの駐車場で、自動車のガラスが次々と割られる事件が発生しました。犯人は近所の自動車ガラス会社の経営者で、売り上げを伸ばす目的で犯行に及んだものでした。その後、戸山ハイツの駐車場を管理する住民組合の役員が、犯人の家族を脅迫したことで逮捕されるという事件も発生しました。

まとめ

戸山ハイツは、都内における大規模団地の先駆けであり、その歴史は戦後の住宅難を背景に持ちます。しかし、現在では高齢化や建物の老朽化といった課題に直面しています。今後の展望として、これらの課題をどのように解決していくかが重要となるでしょう。

参考文献

古賀繭子、定行まり子「1940年代から1970年代における住宅及び団地内施設の実態 戸山ハイツの歴史的経緯に関する研究(その1)」『日本女子大学大学院紀要 家政学研究科・人間生活学研究科』第20巻、日本女子大学、2014年3月20日、61-71頁。
アーバンハウジング 編『1970年代の再生（建替え）後、約40年を経た都内の団地の原点ともいえる戸山ハイツの現状と今後の展望に関する調査研究』アーバンハウジング、2014年。

関連項目

戸山 (新宿区)
陸軍戸山学校 / 陸軍軍医学校 / 陸軍幼年学校
公営住宅
東京都住宅供給公社
団地 / マンモス[[団地]]
* 関東地方の住宅団地の一覧

もう一度検索