陸軍軍医学校

陸軍軍医学校：旧帝国陸軍の医学教育機関

陸軍軍医学校は、かつて東京都新宿区戸山町に位置した、旧大日本帝国陸軍の医学系教育機関です。陸軍戸山学校に隣接しており、海軍には海軍[[軍医学校]]がありました。この学校は、軍医の育成と医学研究を担い、日本の近代医学史において重要な役割を果たしました。

概要

陸軍軍医学校の歴史は、1886年に陸軍省内に設置された陸軍軍医学舎に遡ります。その後、麹町区富士見町、そして牛込区戸山町へと移転しました。この学校は、単なる教育機関にとどまらず、医学研究の拠点としての機能も担っていました。特に、太平洋戦争（第二次世界大戦）中には、中山競馬場の一部が陸軍軍医学校中山出張所として利用され、血清ワクチンの製造が行われました。

跡地に建設された施設

陸軍軍医学校の跡地は、戦後、厚生省（現厚生労働省）に移管され、様々な施設が建設されました。

富士見地区

東京逓信病院
逓信博物館（現・郵政博物館）

戸山地区

厚生労働省戸山研究庁舎
国立感染症研究所本部
独立行政法人国立健康・栄養研究所
国立保健医療科学院
全国障害者総合福祉センター戸山サンライズ
新宿区立障害者福祉センター
中山出張所

これらの施設は、陸軍軍医学校が担っていた医学研究と教育の精神を受け継ぎ、現代の医療・福祉に貢献しています。特に、国立感染症研究所は、感染症対策の最前線として、その重要性を増しています。

沿革

陸軍軍医学校の歴史は、以下のように変遷をたどりました。

1886年（明治19年）：陸軍軍医学舎が陸軍省内に設置。
1888年（明治21年）：麹町区富士見町へ移転。
1923年（大正12年）：関東大震災により本館が崩壊、毒ガス漏出の被害。
1929年（昭和4年）：牛込区戸山町へ移転。
1944年（昭和19年）：中山競馬場の一部が陸軍軍医学校中山出張所となる。
1945年（昭和20年）：東京大空襲により標本館と衛生学教室を除く全てが焼失。
1945年（昭和20年）：陸軍軍医学校令廃止。
1946年（昭和21年）：中山出張所の血清製造工場が千葉県に貸与されるが、進駐軍に接収。
1947年（昭和22年）：中山競馬場が返還され、営業再開。

歴代校長

陸軍軍医学校は、多くの著名な軍医を校長として迎えました。初代校長の緒方惟準をはじめ、森鴎外（森林太郎）など、医学界に大きな功績を残した人物が名を連ねています。

周辺施設

陸軍軍医学校の跡地周辺には、以下の施設が存在します。

国立国際医療研究センター
国立看護大学校
戸山 (新宿区)
戸山ハイツ
戸山公園
箱根山 (新宿区)
早稲田大学戸山キャンパス
学習院女子大学戸山キャンパス
学習院女子中・高等科
早稲田駅
若松河田駅
西早稲田駅

これらの施設は、陸軍軍医学校の歴史と深く関わりながら、地域社会の発展に貢献しています。

人骨騒動

1989年、陸軍軍医学校跡地から多数の人骨が発見され、大きな社会問題となりました。当初は35体と発表された人骨は、その後の鑑定で100体以上、モンゴロイド系以外の人種も含まれ、一部には人為的な加工や銃弾・刃物による傷跡があることが判明しました。このことから、「731部隊による生体実験の犠牲者ではないか」という疑惑が生じました。

鑑定は、当初、複数の大学の医学部教授に依頼したものの、大学側から断られていました。しかし、札幌学院大学の教授に依頼したところ実現しました。その後、裁判で、人骨の火葬・納骨費用の支出を求める訴訟が起こされましたが、住民側が敗訴しました。最終的に厚生労働省が人骨を引き取り、納骨堂に納められました。この一連の騒動は、陸軍軍医学校の負の側面を浮き彫りにし、歴史の闇に光を当てる契機となりました。また、人骨問題に関しては、今もなお、完全な真相解明には至っていません。

関連事項

陸軍軍医学校は、以下の組織と密接な関係にありました。

東京都の軍事史跡一覧
大日本帝国陸軍
陸軍省
731部隊
登戸研究所
陸軍中野学校
陸軍戸山学校
陸軍砲工学校
軍医
東京逓信病院
国立国際医療研究センター
東京都済生会中央病院

これらの組織は、日本の軍事史や医学史において重要な役割を果たしており、陸軍軍医学校との関係を理解することで、より深く歴史を学ぶことができます。

陸軍軍医学校は、その歴史の中で、多くの軍医を輩出し、日本の医学研究を牽引しました。しかし、人骨問題に見られるように、その負の側面もまた、忘れてはならない歴史の教訓として、現代に語り継がれています。

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