戸次川の戦い

戸次川の戦い

戸次川の戦い（へつぎがわのたたかい）は、天正14年（1587年）1月20日に、豊臣秀吉による九州平定の最中に、豊臣軍と島津軍の間で行われた合戦です。この戦いは、豊臣軍にとって九州における最初の本格的な戦いであり、結果は島津軍の圧勝に終わりました。

合戦までの経緯

豊後の大友宗麟は、島津氏の侵攻に苦慮し、豊臣秀吉に救援を求めました。秀吉はこれに応じ、仙石秀久を主将に、長宗我部元親・信親父子らを率いて豊後へ出陣させました。しかし、豊臣軍の動きを察知した島津家久は、先手を打って豊後へ侵攻、大友氏の鶴ヶ城を攻撃しました。

合戦の経過

12月11日、仙石秀久らは鶴ヶ城救援のため、戸次川の手前に陣を構えました。この際、軍議が開かれましたが、仙石は川を渡って即座に攻撃すべきと主張しました。一方、長宗我部元親は援軍を待つべきと反対しましたが、仙石は聞き入れず、十河存保も仙石に同調し、渡河作戦が決定されました。

12月12日、夕方から戦闘が開始されました。しかし、先陣の仙石隊が島津軍の奇襲を受け、たちまち敗走。長宗我部軍3千は孤立し、島津軍の猛攻にさらされました。元親と信親は、乱戦の中で離ればなれとなり、元親は戦場から離脱して九州を脱出、伊予国まで逃れました。一方、信親は中津留川原で奮戦しましたが、島津軍に討たれ、戦死しました。享年22歳。信親に従っていた兵も多くが討ち死に、十河存保も戦死しました。鶴ヶ城も落城しました。

フロイスの記述

宣教師ルイス・フロイスの『日本史』には、この戦いの様子が詳細に記述されています。それによると、豊後勢は上原に城を築くものの、築城作業を怠り、宴会や遊興にふけっていたとのことです。また、豊後勢が利光宗魚の城を救援しようと出陣した際、島津軍は待ち伏せをしていたとされています。豊後勢は戸次川を渡った後、島津軍の奇襲を受け、長宗我部軍は鉄砲を撃つ間もなく、島津軍の猛攻によって壊滅状態となりました。川を熟知していた豊後勢は逃れることができましたが、長宗我部勢は多くの兵が溺死したと記述されています。この戦いで、2300名以上が戦死し、長宗我部信親、十河存保など多くの武将が命を落としました。

戦後

秀吉は、仙石秀久の命令無視と、豊臣政権の権威を著しく低下させた敗戦に激怒し、仙石の所領を没収しました。戸次川の戦いは、豊臣秀吉の九州平定における最初の大きなつまずきであり、その後の戦局にも大きな影響を与えました。

まとめ

戸次川の戦いは、豊臣軍が島津軍に大敗した戦いです。仙石秀久の独断専行が招いたこの敗戦は、豊臣政権に大きな衝撃を与えました。長宗我部信親など多くの武将が討ち死にした悲劇的な戦いであり、九州平定における重要な転換点となりました。この戦訓から、豊臣秀吉は以後の戦いにおいて、より慎重な作戦を立案するようになったと言われています。

参考文献

山本大『長宗我部元親』（新装版）吉川弘文館〈人物叢書〉、1987年。
山本大 編『長宗我部元親のすべて』新人物往来社、1989年。
桐野作人「戸次川の大勝で大友軍を駆逐、九州制覇を目前とする」『烈帛 島津戦記』学習研究社〈歴史群像シリーズ【戦国】セレクション〉、2001年。
ルイス・フロイス　松田毅一・川崎桃太 訳『フロイス日本史』中央公論社、2000年。
寺石正路「戸次川合戦」1923年

関連項目

第二次十河城の戦い
耳川の戦い
沖田畷の戦い

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