戸田忠太夫

戸田 忠太夫（とだ ちゅうだゆう）

戸田忠太夫は、江戸時代末期の日本における水戸藩の家老であり、尊王派の志士として知られる著名な人物です。彼は水戸戸田家の第七代当主であり、家老職に就く際に主君徳川斉昭から「忠太夫」という仮名を賜りました。彼はまた、戸田忠敞や戸田蓬軒と呼ばれることもあります。

系譜

戸田家は三河に由来する名門で、忠太夫は戸田氏の支流に位置する仁連木戸田家に属し、水戸藩に仕官した戸田有信の子孫です。父は水戸藩の世臣、戸田三衛門忠之であり、母は安島家の出身です。戸田家は代々1300石の知行を受け継いでおり、家紋は六曜です。

生涯

忠太夫は文化10年（1813年）に家督を継承し、小普請組の一員として活動を始めます。文政3年（1820年）には大番組頭、文政11年（1828年）には目付に就任しました。水戸藩内で継嗣争いが激化する中、忠太夫は中下士層を率いて、藩主の三男である敬三郎を擁立し、後の徳川斉昭を後継者としました。

斉昭が水戸藩主となると、忠太夫は藤田東湖と共に斉昭を支え、「水戸の両田」として名を馳せます。彼らは優れた学識を有し、尊王の理念を体現した指導者として広く尊敬を受けました。さらに、彼らを含む「水戸の三田」と呼ばれるグループには武田耕雲斎も名を連ね、周囲の信望を集めました。

天保元年（1830年）には藩内での争議のために免職となりますが、斉昭の意向で江戸通事として復帰しました。その後、様々な役職を歴任し、天保11年（1840年）には弘道館の造営に関与するなど、藩政の重要政策に関与しました。彼は特に領内改革や海防策、学校の築造などに尽力し、天保の改革を推進しました。

しかし、弘化元年（1844年）に斉昭が幕府から致仕を命ぜられると、忠太夫自身も免職され、蟄居を命ぜられました。その後、弘化3年（1846年）に蟄居を解かれ、水戸藩の中寄合に再任されますが、弘化4年（1847年）には政界を退くことになります。

義公と忠太夫

忠太夫の優れた政治手腕は評価され、特に大名や天皇からも高く評価されていました。孝明天皇は彼の死を嘆き、彼の功績を深く理解していたと言われています。新政府が成立した後、明治天皇も彼の遺族に祭りの費用を下賜し、忠太夫の業績を称えました。

また、文化人としても知られ、優れた書道や笙の技術を持っていた忠太夫は、多くの文化的資産をも残しました。彼の業績は今なお水戸藩の歴史の中で語り継がれています。

最期

安政2年（1855年）10月に発生した安政江戸地震により、忠太夫は小石川の水戸藩邸で命を落としました。彼は当時、自宅を避けようとした際に倒れた梁木の下敷きとなり、圧死したとされています。悲劇的な最期でしたが、彼の遺志は実弟の安島帯刀、嫡男の戸田銀次郎によって受け継がれました。

忠太夫の慕われる人柄と業績は後世にも記憶され、彼の影響は幕末の日本において重要なものでした。

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