手賀沼ディズニーランド

手賀沼ディズニーランド：幻の計画

手賀沼ディズニーランドは、高度経済成長期の1959年に千葉県北部の手賀沼周辺で計画されたレジャーランドです。実際に建設されることはありませんでしたが、当時の社会情勢や開発計画の変遷を知る上で興味深い事例と言えます。

計画の背景

明治時代から大正時代にかけて、手賀沼畔はその風光明媚さから多くの文化人が居を構え、景観保護運動が展開されていました。戦後、手賀沼周辺の開発計画が持ち上がる中で、手賀沼観光株式会社が設立され、大規模な遊園地建設計画が発表されました。この計画は、単なる遊園地ではなく、スポーツ施設や健康ランド、ヘリポートなどを含む複合施設を目指したものでした。

計画の推移

1959年、後楽園スタヂアム（現・東京ドーム）社長の真鍋八千代らが中心となり、手賀沼観光株式会社が設立されました。同社は「後楽園、上野動物園、船橋ヘルスセンターを合わせたような」大型遊園地の建設を発表し、ロサンゼルス郊外のディズニーランドを参考にした規模を想定していました。

しかし、この計画はすぐに競合他社の存在や、東京オリンピックのボート競技会場招致計画との兼ね合いなど、様々な問題に直面します。最終的には、自民党幹事長の川島正次郎の取り計らいで権利譲渡が行われ、全日本観光開発株式会社が設立されました。

全日本観光開発は、1960年代初頭にかけて、埋め立て免許の取得や起工式を行うなど、計画を具体的に進めていきました。しかし、1963年頃から計画の不透明化が始まり、「埋立地の分譲住宅地化」や「他社への転売計画」などの噂が飛び交うようになります。

計画の頓挫

1965年、全日本観光開発は手賀沼の汚染と会社の財務悪化を理由に、計画の中止を表明しました。この計画中止は、国会や千葉県議会でも審議の対象となり、公有水面埋立法や農地法との関連、手賀沼の汚染状況などが議論されました。

最終的に、1968年4月の千葉県議会土木常任委員会で「宅地造成はやむを得ない」との結論が出され、手賀沼ディズニーランド計画は幻となりました。

計画中止後

全日本観光開発の所有する土地は、我孫子町への寄付や、千葉県・日本地所・三金不動産への売却によって放出され、1968年10月には我孫子分譲地として分譲が開始されました。また、埋立地の東端には、1970年に千葉県立我孫子高等学校が開校しました。

2012年には、柏市郷土資料展示室で手賀沼干拓史に関する展示が行われ、その中で手賀沼ディズニーランドに関する資料が初公開されました。当時の新聞記事や事業計画書、設計図などが展示され、計画の全貌が明らかになりました。

東京ディズニーランドとの関連

手賀沼ディズニーランド計画に参画していた京成電鉄と朝日土地興業は、三井不動産と共同でオリエンタルランドを設立し、1983年に東京ディズニーランドを開園させました。東京ディズニーランドの建設地候補には我孫子市も挙がりましたが、最終的には浦安市舞浜地区が選ばれました。

計画されていた施設

手賀沼ディズニーランド計画では、以下の5つのブロックを中心に、様々な施設が計画されていました。

1. ヘルスセンター地区: 温泉を利用した健康ランド
2. 科学の国: 宿泊施設を備えたスクールロッジ、科学館、水族館、キャンプ場
3. おとぎの国: ジェットコースター、メリーゴーラウンド、釣堀、野外劇場など、ディズニーランドに相当する施設
4. 冒険の国: ロープウェイ、手賀沼タワー、養魚場、サイクリングコース、自然動物園
5. 体育エリア: 体育館、陸上競技場、プール、野球場、テニスコートなど

まとめ

手賀沼ディズニーランド計画は、高度経済成長期の夢と現実、そして開発と環境保護の狭間で揺れ動いた幻のプロジェクトでした。その計画は実現しませんでしたが、当時の社会情勢や人々の期待、そして開発の難しさを物語る貴重な歴史として、今も語り継がれています。

参考文献

我孫子市史編集委員会 近現代部会 編『我孫子市史 近現代篇』我孫子市教育委員会、平成16年3月31日
佐藤清孝 "幻の「手賀沼ディズニーランド」 半世紀前に遊園地計画、開発会社傾き断念 柏の歴史展で資料初公開"朝日新聞2012年6月24日付朝刊

もう一度検索