抒情交響曲

アレクサンダー・ツェムリンスキー『抒情交響曲』

『抒情交響曲』（Lyrische Symphonie）作品18は、アレクサンダー・ツェムリンスキーが1922年に作曲した、ソプラノとバリトンの独唱を伴う管弦楽作品です。1924年にプラハで初演され、ツェムリンスキーの代表作の一つとして知られています。

この作品は、交響曲、協奏曲、カンタータ、オペラといった様々なジャンルの要素を融合させた、総合的な音楽作品と言えるでしょう。音楽語法も多様で、調性、旋法、複調、無調といった新旧の技法が用いられています。

構成と特徴

グスタフ・マーラーの『大地の歌』と同様に、アジアの詩に曲が付けられていますが、ツェムリンスキーの作品では、ラビンドラナート・タゴールの英語散文詩『園丁』のドイツ語訳から、相聞歌のみが選ばれています。マーラーの作品とは異なり、男声同士で歌うことはできません。

『抒情交響曲』では、男女が愛について語り合うものの、最終的には意思疎通が果たせず、すれ違いに終わります。この展開に合わせて、作曲者自身が詩の配列を組み替えています。

全7楽章から構成され、演奏時間は約45分です。各楽章には、便宜上、歌い出しが楽章名として用いられてきましたが、出版譜には楽章番号のみが記されています。

1. わが心、穏やかならず (Ich bin friedlos, ich bin durstig nach fernen Dingen)
2. お母様、若い王子様が (O Mutter, der junge Prinz)
3. お前は夕暮れの雲 (Du bist die Abendwolke)
4. いとしいお方、私に話して下さい (Sprich zu mir, Geliebter)
5. 恋人よ、お前の甘い口づけから解き放してくれ (Befrei mich von den Banden deiner Süße, Lieb)
6. 最後の歌を歌い終えたら、お仕舞いに (Vollende denn das letzte Lied)
7. 安らぐがよい、わが心よ (Friede, mein Herz)

編成

この作品では、マーラーが好んだ弦楽器のグリッサンドや、シェーンベルクが用いたトロンボーンのグリッサンドが効果的に使用されています。

声楽
ソプラノ独唱
バリトン独唱

管弦楽
フルート4（第3、第4はピッコロ持ち替え）
オーボエ2
コーラングレ1
クラリネット（A管、B管）3（第3は小クラリネット持ち替え）
バスクラリネット（A管、B管）1
ファゴット2
コントラファゴット1
ホルン（F管）4
トランペット（C管）3
トロンボーン3
バスチューバ1
ティンパニー
バスドラム
タムタム
シンバル
鉄琴
チェレスタ
ハルモニウム
ハープ
弦楽五部

影響

アルバン・ベルクは、この作品に触発されて『弦楽四重奏のための抒情組曲』を作曲し、ツェムリンスキーの第3楽章を自身の作品に引用しています。

『抒情交響曲』は、その複雑な構成と内省的な内容によって、聴く者に深い感動を与える作品と言えるでしょう。

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