掬い投げ

掬い投げ

掬い投げは、大相撲の決まり手の一つです。差し手で相手の褌を取らず、相手の体をすくうようにして投げる技を指します。

概要

この技は、差し手を容易に取れるという利点に加え、相手の差し手を封じる効果も期待できるため、手堅い相撲を取る際に有効な手段となります。しかし、廻しを取って投げる技に比べると威力は劣るため、決定的な技になりにくい側面もあります。そのため、掬い投げを効果的に使うには、強い回転を生み出す上体の柔軟性や、相手を投げ飛ばすだけの強靭な筋力が必要です。

かつては、横綱・大鵬幸喜や旭富士正也が得意としており、特に大鵬は上体の柔軟性を活かした掬い投げを披露していました。武蔵丸光洋も、太い腕を活かして右差しを得意とする相撲スタイルを確立してからは、掬い投げを効果的に使用していました。武蔵丸の場合は、右差し一本で相手を浮かせて寄り切る意図が、結果的に相手を吹き飛ばす形となり、掬い投げとして記録されるケースが多く見られました。

近年では、舛ノ山大晴が得意技としています。

柔道の掬投との違い

柔道にも同名の「掬投（すく いなげ）」という技が存在しますが、相撲の掬い投げとは動作に共通点がなく、全く異なる技です。柔道の掬投は、相手の脚を掬って投げる技で、足取りに近い動作となります。講道館機関誌『柔道』では、玉嶺生が、柔道の掬投は浮腰の一部、相撲の外小股に近いと述べています。

歴史に残る掬い投げ

1990年3月場所7日目: 横綱・千代の富士貢が、前頭・花ノ国明宏に対し掬い投げを決め、通算1,000勝という大記録を達成しました。
1990年7月場所千秋楽: 大関・旭富士が、横綱・千代の富士との対戦で、千代の富士の投げを打ち返すように掬い投げを決め、2場所連続優勝を果たし、横綱昇進を決定づけました。
1999年11月場所千秋楽: 武蔵丸が、貴乃花との優勝決定戦で、豪快な掬い投げを決め、2場所連続7回目の優勝を飾りました。
2016年11月場所3日目: 勢が、輝との対戦で、珍しい漢字一文字同士の対決を掬い投げで制しました。
2017年1月場所千秋楽: 大関・稀勢の里が、横綱・白鵬に対し、土俵際で逆転の掬い投げを決め、初優勝に花を添えました。この一番は、稀勢の里にとって大関として最後の取組となりました。

関連項目

大相撲の決まり手一覧

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