教育における差別を禁止する条約

教育における差別を禁止する条約（教育差別禁止条約）

「教育における差別を禁止する条約」は、1960年12月14日にユネスコ（国際連合教育科学文化機関）が採択した国際条約です。教育差別禁止条約、または教育における差別待遇の防止に関する条約とも呼ばれます。

条約の目的と概要

この条約は、教育機関におけるあらゆる差別の禁止と、世界人権宣言に基づき、少数民族を含む全ての人の教育を受ける権利を保障することを目的としています。教育の機会均等を促進し、差別をなくすことで、全ての人々が能力を最大限に伸ばせる社会を目指しています。

2024年4月現在、世界で110の国と地域が批准していますが、残念ながら日本はまだ批准していません。しかし、本条約の理念は重要であり、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」や「全ての移住労働者及びその家族の権利の保護に関する国際条約」の前文にも引用されています。

条約の構成と主な内容

本条約は全19条で構成されており、主な内容は以下の通りです。

差別の定義（第1条）: 人種、皮膚の色、性別、言語、宗教、政治的意見、出身、経済状況などに基づく、教育における機会均等を阻害する区別、排除、制限、または特権を「差別」と定義しています。具体的には、教育機会の剥奪、劣悪な教育水準への制限、差別的な教育制度の設置などが禁止されています。
非差別となる例外事項（第2条）: ただし、以下の場合は差別とはみなされません。例えば、同一の教育水準を前提とした男女別学、宗教教育、言語上の理由による保護者の希望に沿った教育制度や機関の設置、私立学校の設置などが挙げられます。
教育の目的と権利（第5条）: 教育は、人格の完全な発展、人権と基本的自由の強化、国民、人種、宗教間の理解・寛容・友好の促進、国連の活動助長を目的とすることが明記されています。また、保護者の教育機関選択の権利、自己の信念に基づく宗教教育・道徳教育の確保の自由、少数民族の言語使用・教授の権利、自己の信念に反する宗教教育の強制からの自由などが保障されています。
紛争解決（第8条）: 条約の解釈に関する紛争は、解決法がない場合、国際司法裁判所に付託されることが明記されています。
留保の禁止（第9条）: 本条約に関する留保は認められていません。

日本の現状と課題

日本はまだこの条約を批准していませんが、教育基本法やその他の国内法において、教育の機会均等が保障されています。しかし、実際には、経済状況や地域、障害の有無などによって教育機会に格差が存在するとの指摘もあります。本条約の批准に向けて、国内法の整備や意識啓発を進め、全ての子どもたちが平等に質の高い教育を受けられる社会を目指す必要があります。

まとめ

「教育における差別を禁止する条約」は、教育の機会均等を保障し、全ての人々が能力を最大限に伸ばせる社会を実現するための重要な国際的な枠組みです。日本も批准に向けて努力することで、より公正で包容的な教育システムを構築し、国際社会における責任を果たすことが期待されます。

関連情報

教育権
言語権
教育を受ける権利

外部リンク

教育における差別を禁止する条約（英語正文） - ユネスコ
教育における差別を禁止する条約（フランス語正文） - ユネスコ
* 教育における差別待遇の防止に関する条約（仮訳） - 日本ユネスコ国内委員会

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