言語権

言語権とは

言語権とは、特定の地域において、言語を話す人々の民族性、国籍、規模に関わらず、公的な場面でも私的な場面でも、自由に意思疎通を図るために言語を選択できるという、人権および市民権に関わる包括的な権利です。

この権利は、当事者にとって理解可能で自由に選択された言語による立法、行政、司法の活動、教育、メディアへのアクセスを含む広範な範囲を対象とします。

特に、少数民族や先住民族が使用する少数言語の保護という観点から、言語権は強制的な文化的同化や言語差別、言語帝国主義に対抗する手段として重要な意味を持ちます。

国際法における言語権

教育における差別を禁止する条約第5条(c)項にも関連する記述が見られますが、一般的には、言語権は文化的な権利や教育的な権利よりも広い枠組みで扱われます。

国際人権規約（市民的及び政治的権利に関する国際規約）第27条では、言語的少数民族がその固有の言語を使用する権利を否定されないことが明記されています。この条項は、少数言語話者の言語権を保護する上で、国際的な法的根拠となっています。

言語権に関連する重要な文書

言語権に関する議論や取り組みを進める上で、以下の文書が重要な役割を果たしています。

Universal Declaration of Linguistic Rights（言語に関する権利の世界宣言）
ヨーロッパ地方言語・少数言語憲章
Framework Convention for the Protection of National Minorities（少数民族保護枠組条約）

これらの文書は、言語の多様性を尊重し、少数言語話者の権利を保護するための国際的な基準や原則を示しています。

まとめ

言語権は、個人の尊厳と文化的な多様性を守る上で不可欠な権利です。少数言語の保護だけでなく、すべての人が自由に意思疎通できる社会を実現するために、言語権の保障は重要な課題となります。

参考文献

T Skutnabb-Kangas & R Phillipson, Linguistic Human Rights: Overcoming Linguistic Discrimination, Berlin: Mouton de Gruyter, 1994.
言語権研究会 [編集] (1999)『ことばへの権利　言語権とはなにか』 三元社 ISBN 4-88303-061-X
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桂木隆夫 [編集] (2003)『ことばと共生　言語の多様性と市民社会の課題』 三元社 ISBN 4-88303-114-4
小嶋勇 [監修]；全国ろう児をもつ親の会 [編集] (2004)『ろう教育と言語権 ろう児の人権救済申立の全容』 明石書店 ISBN 4-7503-1959-7
『ことばと社会』編集委員会 [編集] (2004)『ヨーロッパの多言語主義はどこまできたか』 三元社 ISBN 4-88303-110-1
真田信治・庄司博史 [編集] (2005)『事典　日本の多言語社会』岩波書店 ISBN 4-00080-305-0
植田晃次・山下仁 [編集] (2006)『「共生」の内実　批判的社会言語学からの問いかけ』 三元社 ISBN 4-88303-163-2
ましこ・ひでのり [編集] (2006) 『ことば/権力/差別 言語権からみた情報弱者の解放』三元社 ISBN 4-88303-192-6
大熊智之 (2006)「日本における「言語権」意識の不在」
渋谷謙次郎・小嶋勇 [編集] (2007)『言語権の理論と実践』　三元社 ISBN 978-4-88303-211-2

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