新屋英子

新屋英子：演劇界の重鎮、その生涯と業績

1928年、大阪に生まれた新屋英子（しんや えいこ、本名：鶉野英子）は、日本の演劇史にその名を刻んだ偉大な女優です。戦時中は陸軍師団司令部に勤務していましたが、終戦後、演劇の世界へと足を踏み入れます。

1957年には、劇団関西芸術座の創設メンバーに加わり、本格的な女優としてのキャリアをスタートさせました。持ち前の演技力で数々の舞台を成功に導き、その名は演劇界に知れ渡るようになります。

彼女の代表作として広く知られているのは、一人芝居『身世打鈴（しんせたりょん）』です。在日朝鮮人の女性オモニの心情を深く掘り下げたこの作品は、1973年の初演以来、2000回を超えるロングラン公演を達成しました。彼女の圧倒的な演技力と、作品に込めた深い思いが、多くの観客の心を掴んだことは間違いありません。この作品によって、新屋英子という女優の名は、広く世間に知られることとなります。

『身世打鈴』以外にも、数々の舞台作品で主演を務めました。『チョゴリの被爆者』や『燕よ、あの人に伝えてよ』など、社会問題や人間の心の機微を描いた作品も多く手がけました。これらの作品を通じて、彼女は観客に様々な感情と深い思考を呼び起こす存在となりました。

舞台にとどまらず、新屋英子は映画にも数多く出演しています。山田洋次監督作品『学校』でのオモニ役をはじめ、『ジョゼと虎と魚たち』や『ぼくんち』など、個性的な役柄を演じ分けることで、映画ファンにも強い印象を与えました。その演技力は、舞台とはまた違った魅力を発揮し、幅広い世代の観客を魅了しました。

テレビドラマへの出演も精力的に行っていました。『仮面の忍者赤影』や『素浪人月影兵庫』『遠山の金さん』など、時代劇作品を中心に、個性あふれる役柄を演じきりました。

新屋英子の活躍は、演劇や映画、テレビドラマという枠に留まりません。彼女は数々の著書も発表しており、その中には自身の演劇人生を振り返った自伝『女優新屋英子　私の履歴書』も含まれています。自身の経験や考えを綴ったこれらの作品は、多くの後輩女優たちに影響を与えました。

私生活では、劇作家・演出家の鶉野昭彦氏と結婚し、娘は女優・演出家の鶉野樹理氏です。

2016年5月2日、87歳でこの世を去りました。彼女の死は、演劇界全体に大きな悲しみをもたらしました。しかし、彼女が残した数々の作品と、その演技力は、人々の記憶に深く刻み込まれ、これからも多くの人々に感動を与え続けるでしょう。新屋英子の功績は、日本の演劇史に燦然と輝くものと言えます。

受賞歴:
大阪府民劇場賞（『荷車の歌』）
大阪府・大阪市文化祭賞（『藤戸』）

主な出演作品:
舞台
身世打鈴
チョゴリの被爆者
燕よ、あの人に伝えてよ
ヒミコ伝説
わたしの蓮如さん
星砂―オキナワ

映画
旅の重さ（1972年）
唐獅子警察（1974年）
ア・ホーマンス（1986年）
学校（1993年）
ジョゼと虎と魚たち（2003年）
ぼくんち（2003年）
お父さんのバックドロップ（2004年）
幸福のスイッチ（2006年）
パッチギ! LOVE&PEACE（2007年）
図鑑に載ってない虫（2007年）
ぐるりのこと。（2008年）
インスタント沼（2009年）

テレビドラマ
仮面の忍者 赤影 (1967年)
素浪人 月影兵庫 第2シリーズ (1967年)
素浪人 花山大吉 (1969年)
世なおし奉行 (1972年)
遠山の金さん 杉良太郎版 (1976年-1977年)
桃太郎侍 (1977年-1978年)
江戸プロフェッショナル必殺商売人 (1978年)
水戸黄門 第9部 (1979年)
銭形平次 (1979年)
雪 (1994年)
新・赤かぶ検事奮戦記シリーズ (1994年-1996年)
金曜時代劇 出雲の阿国 (2006年)
火の魚 (2009年)
熱海の捜査官 (2010年)

著書
『演じつづけて』（解放出版社）
『女優新屋英子 私の履歴書』（解放出版社）
* 『身世打鈴―ひとり芝居の世界』（手鞠文庫）

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