新構想大学

新構想大学（しんこうそうだいがく）とは

新構想大学とは、1973年に創設された筑波大学を先駆けとし、従前の国立大学における組織構造や管理運営の仕組みとは一線を画す体制をもって設立された一連の国立大学を指します。

概要

これまでの大学では、教育と研究の機能が、学部・学科・講座といった同じ組織の中で一体化されていました。また、大学全体の意思決定は評議会が中心となっていましたが、学部の教授会の権限が非常に強く、学長がリーダーシップを発揮して迅速な意思決定を行うことが困難な状況でした。さらに、学部・学科内では講座ごとの独立性が高まり、「タコツボ」と批判される弊害も生じていました。

こうした従来の大学制度が抱える問題点に対する反省から、新構想大学は構想されました。その主な特徴は以下の通りです。

1. 教育組織と研究組織の分離：学生が所属する教育のための組織と、教員が研究を行うための組織を機能的に区分しました。
2. 学長管理運営体制の強化：従来の大学に少なかった副学長を置き、学長の権限を強化しました。
3. 学外意見の反映：大学運営に外部の視点を取り入れるため、参与を設置しました。

最初の新構想大学である筑波大学では、教育組織として「学群・学類」を、研究組織として教員が所属する「学系」を設け、教育と研究の組織を明確に分離しました。これにより、従来の学部教授会は設置されていません。

しかしながら、筑波大学以降に設置された新構想大学の多くは単科大学であったため、教育と研究の組織を完全に分離する体制はあまり採用されませんでした。一方、学長権限を強化する副学長制度や、学外の意見を反映させる参与の制度は、その後のほとんどの新構想大学で導入されました。ただし、筑波大学が導入した参与会という合議体は、他の新構想大学には見られません。この点から、新構想大学の構想された理念を最も忠実に実現したのは筑波大学のみであったと言えます。

経緯

筑波大学の設置は、元々は手狭で分散したキャンパスに悩んでいた東京教育大学を、当時建設が進められていた筑波研究学園都市へ移転させる計画として始まりました。しかし、この移転問題は、当時の激しい大学紛争の渦中に巻き込まれました（「筑波移転反対闘争」参照）。その結果、単なる移転ではなく、東京教育大学を母体としつつも、根本的に新しい構想に基づく新たな大学を設置することになりました。

新しい大学の構想は、東京教育大学内部でも検討されましたが、新構想大学という概念は、主に文部省が設置した「筑波新大学創設準備調査会」の報告書「筑波新大学のありかたについて」に端を発しています。新構想大学としての筑波大学を設置するためには、既存の法律（国立学校設置法など）の改正が必要であり、これらをまとめた「筑波大学法案」が国会に提出されました。野党の強い抵抗もありましたが、1973年9月に法案が成立し、同年10月に筑波大学が開学しました。

筑波大学の開学後、1974年以降は、地域医療の充実を目指す「一県一医大」政策に基づき設置された国立医科大学が、講座編成の柔軟化や6年一貫教育、副学長や参与の導入といった特徴を持つことから、新構想大学としての性格を持つとされました。

さらに、1976年には、高等専門学校卒業生を受け入れ、大学院修士課程まで一貫した4年制教育を特色とする2つの技術科学大学（長岡技術科学大学、豊橋技術科学大学）が設立されました。

また、現職教員の再教育や研究機会を提供するための大学院中心の大学として、1978年から1981年にかけて3校の新教育大学（兵庫教育大学、上越教育大学、鳴門教育大学）が設置されました。

このほかにも、図書館情報大学（1979年）、鹿屋体育大学（1981年）、映像メディアを活用した講義を行う放送大学（1983年）といった専門分野の単科大学や、1988年から1997年にかけては学部を持たない大学院大学（総合研究大学院大学など4校）も新構想大学として設立されています。

一方で、2004年に国立大学が独立行政法人化されて以降、学長や法人の理事会のリーダーシップが強化され、また教員組織の再編も進んだ結果、新構想大学と従来の大学との間の組織・運営体制上の差異は以前よりも小さくなっています。

新構想大学の一覧（主なもの）

総合大学：筑波大学（1973年）
医科大学：浜松医科大学（1974年）、滋賀医科大学（1974年）など
技術科学大学：長岡技術科学大学（1976年）、豊橋技術科学大学（1976年）
新教育大学：兵庫教育大学（1978年）、上越教育大学（1978年）、鳴門教育大学（1981年）
大学院大学：総合研究大学院大学（1988年）など
その他：鹿屋体育大学（1981年）、放送大学（1983年）など

（設立時の名称、カッコ内は設立年）

（参考文献：文部科学省「学制120年史」など）

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