新田俊純

新田俊純：旗本から男爵へ、波乱の生涯

新田俊純（にったとしずみ、1829-1894）は、江戸時代後期の交代寄合旗本、明治時代の政治家、そして華族（男爵）として知られる人物です。幼名は智丸、通称は兵部、主税、満次郎などと呼ばれていました。彼は、幕末期には岩松姓を名乗っていましたが、維新後、新田姓に復姓しています。

幕末までの苦難

1829年、上野国新田郡で交代寄合旗本、岩松道純の長男として生まれた俊純は、家格は高かったものの、わずかな家禄（120石）しかなく、常に貧困に喘いでいました。彼は、生活費を稼ぐため、猫の絵を描いて売るなどしていたと言われています。

新田勤王党と官軍への参加

文久年間には、薩摩藩士であった中井弘（鮫島雲城）が俊純を新田義貞の後裔として擁立し、勤王の義軍結成を企てたという説もあります。慶応3年（1867年）、尊皇攘夷の志を持つ俊純は、新田義貞の遺志を継ぎ、新田勤王党を結成、盟主となります。しかし、彼らの倒幕計画は幕府に漏れ、逮捕の危機に瀕します。しかし、慶応4年（1868年）、官軍が中山道を進軍した際に解放され、一命を取り留めました。

俊純は、岩倉具定に書状を送り、新田義貞の志を継ぎ官軍に加わることを願い出ます。その忠誠心と新田義貞の子孫であることを認められた俊純は、新田勤王党を新田官軍として再編し、官軍の一隊となりました。新田官軍は、58名全員が新田郡の住民で構成され、武蔵忍城への官軍進撃時には洋砲と火薬の支給を受けました。

会津藩軍との戦闘では、上野国の他の藩兵と共に戦功を挙げ、徳川幕府滅亡に貢献しました。その後、新田官軍は東京の鎮守府に編入され、市中警備に当たりました。

明治時代と華族への叙爵

慶応4年5月8日、岩松俊純は朝臣に転じ、新田姓に復姓し、中大夫に列しました。その後、士族となり、権大舎人を務めました。明治14年、旧臣の金井之恭は、俊純の新田義貞の後裔であること、戊辰戦争での戦功を訴え、華族への編入を政府に請願しました。新田義貞の嫡流を巡っては、岩松新田家と由良新田家の間で論争がありましたが、最終的に岩松新田家が正統と認められ、俊純は明治16年（1883年）に華族に列し、翌年には男爵に叙せられました。この叙爵には、俊純の娘の夫であった井上馨の助力があったとされています。

明治27年（1894年）、66歳で死去。東京で葬儀が執り行われ、谷中の天王寺に埋葬されました。男爵位は次男の忠純が継承しました。

栄典と参考文献

1889年（明治22年）6月26日 - 正五位
1894年（明治27年）3月10日 - 従四位

本記事の作成にあたり、以下の参考文献を参照しました。（参考文献リストは省略）

新田俊純は、貧困の中で育ちながらも、強い信念と行動力で、旗本から官軍の指揮官、そして華族男爵へと上り詰めた稀有な人物でした。彼の生涯は、激動の時代を生き抜いた一人の男のドラマであり、現代に生きる私たちに多くの示唆を与えてくれます。彼の生き様は、様々な困難に直面する私たちに、勇気と希望を与え続けることでしょう。

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