新開地

新開地：神戸の文化と歴史が交差する街

兵庫県神戸市兵庫区に位置する新開地は、その名前の通り、湊川の付け替え工事に伴い生まれた新しい街です。明治時代後期から昭和時代にかけて、数多くの映画館や劇場が軒を連ね、「東の浅草、西の新開地」と謳われるほどの活況を呈しました。映画解説者・淀川長治氏も新開地を「神戸文化の噴水」と称賛したほどです。

黎明期：活況を呈した娯楽街の誕生

1901年の湊川付け替え工事が完了した後、1905年に旧河川敷の整備が始まり、新開地の歴史が幕を開けます。初期には「相生座」などの芝居小屋や活動写真館が次々と開業し、大正時代に入るとその数はさらに増加。1911年の正月三が日には、当時の神戸市民のほぼ全員が訪れたと推定されるほどの賑わいを見せました。新聞記事にもその盛況ぶりは大きく取り上げられています。

大正・昭和：繁栄と戦争の影

大正時代には、聚楽館や松竹劇場といった大規模な劇場が開業し、新開地はますます発展を遂げます。川崎造船所の職工の通勤や、多くの観客が劇場を訪れる様子は「青き流れ「と表現されるほどでした。1924年には神戸タワー（新開地タワー）も完成し、街のシンボルとして親しまれました。

しかし、昭和時代に入ると、戦争の影響を受け始めます。営業時間の短縮や灯火管制、そして1945年の神戸大空襲によって、新開地の多くの施設が焼失。戦後の進駐軍接収も復興を遅らせる要因となりました。

高度経済成長期から阪神淡路大震災へ

戦後、新開地は映画館が復活し、再び賑わいを見せますが、娯楽の多様化や中心地の三宮への移転、神戸市電の廃止、造船所の縮小などにより、徐々に衰退していきます。映画館の閉鎖やパチンコ店の増加、風紀の乱れなどが問題となり、かつての繁栄からは程遠い状況に陥りました。

1995年の阪神・淡路大震災では、新開地も大きな被害を受けました。しかし、この震災をきっかけに、地域住民や行政による積極的な再開発が始まり、新しい街づくりが推進されました。

再生への歩み：新たな文化拠点として

1980年代から始まった地域住民によるまちづくり活動は、震災後も継続されました。「アート「「遊び「「都市居住「の3本柱を掲げ、商店街のアーケード撤去、新しい建物の建設、湊川公園のリニューアルなどが行われました。2001年には聚楽館跡地にアミューズメント施設がオープンし、2018年には神戸新開地・喜楽館が開業。現在も、市民団体を中心とした更なる復興と発展への取り組みが続けられています。

新開地を彩る施設

現在、新開地には新開地商店街、湊川商店街、湊川パークタウンなどの商店街、メトロこうべなどの地下街、新開地アートひろばなどの複合文化施設、ホール、映画館、寄席、遊戯施設、そして湊川公園などがあり、活気ある街並みを形成しています。

かつて存在した神戸タワー、湊川温泉、数多くの映画館や劇場など、新開地の歴史を語る上で重要な役割を果たした施設も数多くありました。

新開地は、かつての栄光と震災からの復興、そして現在進行形の街づくりを通して、神戸の文化と歴史を深く感じることができる場所です。

もう一度検索