方本仁

方本仁（ほう ほんじん）：激動の時代を駆け抜けた軍人・政治家

方本仁は、清朝末期から中華民国にかけて活躍した軍人であり、政治家です。字は耀亭または耀廷。

北京政府から国民党へ

当初、方本仁は北京政府の直隷派に属していました。しかし、後に国民政府（中国国民党）に転じ、その政治的立場を大きく変えます。この転身は、当時の中国政局の流動性を象徴する出来事の一つと言えるでしょう。

張学良の易幟への貢献

方本仁の功績として特筆されるのは、張作霖の息子である張学良を国民党に帰順（易幟）させたことです。当時、東北地方を支配していた張学良の動向は、中国全体の政治情勢に大きな影響を与えました。方本仁は国民政府の代表として、張学良との交渉を重ね、その易幟を実現させました。この過程では、日本の妨害工作もあったとされ、方本仁は困難な状況の中で重要な役割を果たしたと言えます。

直隷派としての活動

1902年、方本仁は武昌右旗馬隊営に入隊し、軍人としてのキャリアをスタートさせます。その後、湖北陸軍特別小学堂、北京陸軍軍官学堂（後の北洋陸軍大学）で学び、軍事に関する知識と技能を習得しました。1909年に卒業すると、禁衛軍騎兵排長に任ぜられ、軍人としての地位を確立していきます。

李純の下での活動も、方本仁のキャリアにおいて重要な時期でした。李純が江西都督に任ぜられると、方本仁はその下で都督府参議庁庁長、陸軍将校講習所所長、督軍署参謀長などを歴任し、行政手腕を発揮しました。1917年には贛西鎮守使に任命され、地方の治安維持に尽力しました。

1924年12月、蔡成勲が広州の中国国民党討伐に失敗すると、方本仁はこの機を捉えて兵変を起こし、蔡を下野させました。そして、北京政府中央から暫署江西督弁に任命され、翌1925年1月には正式に江西督弁に任命されました。同年11月には、孫伝芳の下で五省聯軍贛軍総司令に任命されています。

国民党への易幟とその後

しかし、1926年3月、呉佩孚に支援された鄧如琢らの兵変により、方本仁は下野を余儀なくされます。その後、広東省に逃れて国民党に易幟し、江西宣撫使兼第11軍軍長に任命され、北伐軍に従軍しました。

1928年6月、張作霖爆殺事件が起こると、方本仁は国民政府代表として東北へ赴き、張作霖の葬儀に参列しました。その後、張学良を易幟させるために奔走し、日本の妨害工作と激しい折衝を繰り広げました。同年、張学良が易幟すると、東北政務委員会委員に任ぜられました。

1929年3月、国民党3期1中全会で中央政治会議委員に補欠選任され、同年5月には湖北省政府民政庁庁長兼代理省政府主席に任命されました。同年10月には、軍事委員会委員長北平行営主任に起用され、1930年には国軍編遣委員会委員等に任ぜられています。1931年4月、軍事参議院上将参議に任命され、同年12月には国民党第4期中央執行委員に選出されました。

実業家として、そして隠遁へ

蔣介石との意見の相違から、1931年をもって下野した方本仁は、1932年以降、実業家として活動します。武漢で長江飯店を経営し、運輸事業にも参入しました。また、中国農工銀行常務董事、江南鉄路公司監察人なども務めました。

日中戦争が勃発し、武漢が陥落すると、方本仁は日本軍から親日政権への参加を求められますが、これを拒否し、黄州に隠棲しました。1949年には、白崇禧から民軍総指揮に任命されますが、就任を拒否し、中国人民解放軍に呼応しました。1951年2月15日、天津で病没。72歳でした。

方本仁は、激動の時代を生き抜き、その生涯を通じて様々な役割を担いました。彼の足跡は、中国近現代史の一つの断面を映し出していると言えるでしょう。

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