旅愁 (1950年の映画)

旅愁 (September Affair)

概要

1950年に製作されたアメリカ映画で、原題は『September Affair』です。監督はウィリアム・ディターレが務め、主演はジョーン・フォンテインとジョゼフ・コットンが演じました。イタリアからアメリカへ向かう旅の途中で出会った二人の男女が織りなす、切なくも美しい恋愛ドラマとして知られています。

本作は、1950年8月から9月にかけてイタリアで開催された第11回ヴェネツィア国際映画祭で初めて上映されました。

物語

物語は、著名なピアニストであるマリアンヌ・スチュアート（ジョーン・フォンテイン）と、妻子を持ちながらも人生にどこか満たされないものを感じているアメリカ人技師、デヴィッド・ローレンス（ジョゼフ・コットン）が、イタリアからアメリカへ向かう旅客機の中で偶然に出会うことから始まります。

搭乗していた飛行機がアクシデントに見舞われ、彼らは予期せぬ滞在を強いられることになります。この予期せぬ時間の中で、二人は次第に惹かれ合い、許されない関係へと踏み出してしまいます。現実世界から逃れるように、二人はそれぞれの過去や責任から離れ、イタリア各地を旅しながら共に生きることを選びますが、社会的な制約や心の葛藤が、彼らの前に大きな壁となって立ちはだかります。ピアニストとしてのキャリア、家庭を持つ者としての責任、そして何よりも二人の愛の行方が、切ない旋律に乗せて描かれていきます。

主要キャスト

物語を彩る主要キャストは以下の通りです。

マリアンヌ（マニナ）・スチュアート: ジョーン・フォンテイン
才能豊かなピアニスト。
デヴィッド・ローレンス: ジョゼフ・コットン
米国人技師で、妻子を持つ。
マリア・サルヴァティーニ: フランソワーズ・ロゼー
マリアンヌの尊敬するピアノの師であり、親友。
キャサリン・ローレンス: ジェシカ・タンディ
デヴィッドの妻。
デヴィッド・ローレンス・ジュニア: ロバート・アーサー
デヴィッドの息子。
* グラッツィ: フォーチュニオ・ボナノヴァ

音楽

本作において音楽は、登場人物の心情や物語の展開に深く寄り添う重要な役割を果たしています。特に印象的に使用されているのは、セルゲイ・ラフマニノフの『ピアノ協奏曲第2番』です。ピアニストである主人公マリアンヌの芸術への情熱や内面の葛藤を表現する上で、この楽曲が効果的に用いられています。

また、劇中で流れる楽曲として、マクスウェル・アンダーソン作詞、クルト・ヴァイル作曲の『セプテンバー・ソング』（September Song）も特筆されます。この歌はウォルター・ヒューストンが歌っており、主人公たちの成熟した大人の恋の切なさや、限られた時間の儚さを象徴するかのように響き渡り、物語に深みを与えています。

製作背景

撮影は主に1949年に行われました。イタリアでの美しい風景を捉えるロケーション撮影が同年8月に集中的に実施された後、アメリカ国内などで同年11月1日から12月15日にかけて主要な撮影が行われました。さらに、同年12月19日には追加撮影も行われています。

衣裳デザインは、ハリウッド映画史に名を残す著名なデザイナー、イーディス・ヘッドが担当しました。彼女の手腕により、登場人物たちが置かれた状況や心情が、その時代のファッションを通して繊細に表現されています。

また、本作のプロデューサーであるハル・B・ウォリスが、劇中のワンシーンに土産物屋を訪れる旅行客としてカメオ出演していることも、ファンにとっては見どころの一つとなっています。

評価

本作は、公開翌年の1951年に開催された第9回ゴールデングローブ賞において、作曲賞を受賞しました。

日本での紹介

日本では劇場公開された後、幾度かテレビで放送され、長年にわたり多くの映画ファンに親しまれてきました。特に日本語吹替版は複数制作されており、その歴史を物語っています。

1969年9月6日にはNHKの『劇映画』枠で放送されたほか、1973年9月21日にはフジテレビの『ゴールデン洋画劇場』でも放送されました。さらに、1990年1月2日には日本テレビの『新春映画劇場』枠にて、ノーカット版として放送されるなど、繰り返し日本のお茶の間に届けられてきました。これらの放送を通じて、本作の切ない物語と印象的な音楽は、多くの人々の記憶に残っています。

もう一度検索