日中友好合作現代音楽祭

日中友好合作現代音楽祭（にっちゅうゆうこうがっさくげんだいおんがくさい）は、日本の作曲家である石井眞木が中心となって企画・実現された音楽祭です。1996年から2004年にかけて開催され、日本と中国両国の作曲家や演奏家が音楽活動を通じて交流を深め、新しい音楽作品を生み出し、紹介することを目的としていました。

開催の経緯

音楽祭が始まるきっかけは、石井眞木が中国音楽への関心を深め、1995年に二胡とオーケストラのための『飛天頌歌』を作曲したことに遡ります。同時期に、山本純ノ介も中国琵琶とオーケストラのための『紅焔』を書き、これら二つの作品は同じ演奏会で初演され、大きな反響を呼びました。この成功を受け、石井と山本は中国での作品演奏を計画します。その結果、1996年に北京で、中国の文化を管轄する政府機関と、石井眞木を委員長とする日本側実行委員会の共催により、「東京の響きin北京」と題された演奏会が開催されました。この演奏会では、中国放送交響楽団が演奏し、指揮は李心草と石井が務め、ソリストは全員中国人でした。多くの文化関係者が来場し、好評を博しました。

この北京での演奏会を契機に、石井眞木と北京にある中央音楽学院の作曲教授陣との間で交流が進展しました。翌年の1997年には、中央音楽学院副院長の劉康華教授、作曲家の唐建平、そして石井眞木が中心となり、「日中友好合作現代音楽祭」が正式に企画・開催される運びとなりました。石井は引き続き実行委員長を務め、北京で3日間にわたって行われました。この音楽祭は「古楽同源・新楽共創」（古い音楽は源を同じくし、新しい音楽を共に創造する）というテーマを掲げ、さらに日中国交正常化25周年記念事業として位置づけられました。日中両国の8人の作曲家に新作を委嘱するという、極めて意欲的な試みも行われました。演奏には、日本から横笛の赤尾三千子、打楽器の吉原すみれなどが参加し、中国側のソリストやオーケストラと共演しました。会場周辺にダフ屋が出没するほどの盛況ぶりだったと伝えられています。

第2回音楽祭

音楽祭の中心人物であった石井眞木は2003年に逝去しましたが、生前に第2回音楽祭の構想を練っていました。その意思を引き継ぎ、さらに規模を拡大した第2回音楽祭が、2004年10月に東京と北京の両都市で計8日間にわたって開催されました。この回も前回と同じく「古楽同源・新楽共創」をテーマに掲げました。主催は、中国の対外文化交流機関、中央音楽学院、日本側の日中友好合作現代音楽祭実行委員会（委員長は湯浅譲二）、そしてオーケストラ・ニッポニカの四者が担いました。企画内容は多岐にわたり、オーケストラ演奏会2回、室内楽演奏会3回、講演会2回などが含まれていました。

プログラムには、日中両国の作品だけでなく、石井眞木の師であるボリス・ブラッハーをはじめとするドイツの作曲家の作品も取り上げられました。これは、東洋と西洋の音楽的融合を追求した石井の思想を反映した構成と言えます。演奏には日中両国の著名なソリストに加え、ドイツからリコーダー奏者のグードゥーラ・ローザも参加し、国際色豊かな顔ぶれとなりました。指揮は本名徹次が担当し、管弦楽はオーケストラ・ニッポニカが務めました。この第2回音楽祭では、石井眞木への追悼の意を込めた作品も演奏され、その功績を称えました。

音楽祭で紹介された主な作品（抜粋）

この音楽祭を通じて、多くの現代音楽作品が紹介されました。特に、1997年と2004年の音楽祭では、テーマに基づいた新作委嘱が重要な柱となりました。

- 1996年（東京の響きin北京）

- 石井眞木：『飛天頌歌』、『二泉映月』（編曲）、『ストリングス・カーナヴァル』（編曲）
- 山本純ノ介：『紅焔』
- 芥川也寸志、三枝成彰、外山雄三、石井眞木：交響組曲『東京』

- 1997年（第1回音楽祭）

- 委嘱新作：賈達群『無詞歌』、葉小鋼『青木香』、秦文琛『蒼黄的古月』、山本純ノ介『鸞鏡』、杜鳴心『飄紅玉』、陳明志『同声相応・同気相求』、唐建平『弾歌・爾雅・相和』、石井眞木『人間如夢』など
- 既存作品：松村禎三『幻想曲』、石井眞木『飛天生動 III』、一柳慧『光凪』など

- 2004年（第2回音楽祭）

- 委嘱作品：秦文琛『風月迭響』（リコーダー、中国笙とオーケストラのため）、藤田正典『砂丘の彼方へ』（中国琵琶と打楽器のため）、南聡『星辰／擬態』（中国琵琶のため、石井眞木追悼）
- 石井眞木作品：『アフロ・コンチェルト』、『ブラックインテンション I』、『テノール・リコーダーのための「東・緑・春」』、『人間如夢Ⅲ』など（一部は追悼演奏）
- その他：ボリス・ブラッハー『パガニーニの主題によるオーケストラ変奏曲』、唐建平『倉才』、湯浅譲二『テノール・リコーダーのための「プロジェクション」』、篠原眞『フラグメンテ』、陳明志、陳怡、周龍、向民、ゲラルド・エッカート、アネッテ・シュリュンツらの作品

この音楽祭は、日中両国の現代音楽の作曲家や演奏家にとって、互いの文化や音楽作品を知り、共同で新しい表現を追求する貴重な機会を提供しました。石井眞木の熱意と尽力により実現したこの音楽祭は、日中間の音楽交流史において重要な足跡を残したと言えるでしょう。

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