日向妙国寺について
日向妙国寺(ひゅうがみょうこくじ)は、
宮崎県日向市細島に所在する
日蓮宗の
寺院です。山号を興福山と称し、興統法縁に属しています。細島港を見下ろす米ノ山に位置し、その歴史は古く、地域の信仰の中心として重要な役割を果たしてきました。
歴史
妙国寺の開山は宰相阿闍梨日郷であり、第二祖は薩摩阿闍梨日叡です。日叡は九州出身で初めて
日蓮の門下となった僧として知られています。
この地は古くから
密教系の
山岳信仰が盛んであり、その道場として
明王堂が存在していました。現在も、
鎌倉時代のものと思われる
不動明王像や
狛犬が残されており、当時の信仰の様子を伝えています。
高岡本永寺の伝承によれば、
鎌倉時代末期に日郷が細島に訪れ、当時の
明王堂住持であった薩摩法印を
真言宗から
法華宗に改宗させたと言われています。その際、
明王堂(現在の妙国寺)のほか、日知屋阿弥陀堂(現在の
定善寺)、行縢大日堂(現在 の本東寺)も法華堂に改められたとされています。ただし、実際に日向の地を訪れたのは日郷ではなく、鎌倉本国土妙寺(現在の京都山科
本圀寺)の日能でした。妙国寺の山号寺号は、興尊受福山本国土妙寺に由来し、檀信徒からは福を興す山として親しまれています。
1331年には、
日蓮門下初の九州伝道として、朗門九鳳日印の弟子である日能が細島に上陸しました。
1333年には薩摩法印が日能の教化を受け、
明王堂を法華堂に改め、同年には富士大石寺百貫坊日仙の門下となりました。その後、
1334年に仙代問答を経て大石寺日道の門下となりましたが、
1335年に教義解釈の違いから日道の下を離れ、日郷の門下となり、名を日叡と改め日向に戻りました。
1341年には、日叡が再び
保田妙本寺の日郷を訪ね、西国唱導師として九州開教の委嘱を受け日向に帰郷しました。翌
1342年には、細島法華堂を妙谷寺と号しました。
江戸時代に入ると、細島港は南九州諸藩の
参勤交代の中継地として重要視され、幕府直轄領(
天領)となりました。この時期、妙谷寺は幕府役人の宿泊施設として利用され、その頃から妙国寺と通称されるようになりました。
幕末には、
安井息軒が父の滄洲と共に妙国寺を参拝した記録が残っています。
1872年(
明治5年)に、この年に成立した
日蓮宗に帰属し、
1874年(
明治7年)に
日蓮宗が一致派と勝劣派に分かれた際には、妙国寺は勝劣派に帰属しました。
1876年(
明治9年)には、勝劣派が5派に分かれ、そのうち
富士門流は
日蓮宗興門派と称するようになり(後に本門宗と改称)、妙国寺は
日蓮宗興門派に包括されました。
1941年(
昭和16年)には、本門宗が
日蓮宗、顕本
法華宗との
三派合同により
日蓮宗となり、
興統法縁会を結成。妙国寺は
日蓮宗(
興統法縁会)に所属しました。
1956年(
昭和31年)には第37世中林日修により
日蓮正宗に改宗しましたが、翌
1957年(
昭和32年)には
日蓮正宗を離脱し、単立宗教法人
日蓮宗郷門派と称しました。
1976年(
昭和51年)には第38世黒木日慎により
日蓮宗に復帰しました。この復帰には小西法縁の協力があり、九州では珍しく小西法縁法恩寺法脈に属しています。
昭和20年代から30年代にかけての混乱期には、
日蓮真筆
曼荼羅をはじめとする多くの寺宝を紛失しましたが、日郷真筆
曼荼羅と日要真筆
曼荼羅は現存し、寺宝として大切に保管されています。
文化財
妙国寺には、以下のような文化財があります。
妙国寺庭園(国の
名勝)
日向市保存樹 夫婦いちょう(推定樹齢300年)
日郷真筆
曼荼羅
日要真筆
曼荼羅
伊東家持仏
不動明王像
伝説
妙国寺には、以下のような伝説が残されています。
日要による伊東家
怨霊の降伏
耳川の戦いにおける
島津義久の戦勝祈願
幕末の
志士、
平野国臣の
出家得度
西南戦争時、
有栖川宮熾仁親王による参拝と庭園観覧
正岡子規参拝、庭園観覧
塔頭
かつては十二坊の支院があったと伝えられていますが、廃寺となり現存していません。ただし、現在も旧暦の1月15日には日要ゆかりの行事として「十二社参り」という伝統が残されており、かつては実際に十二坊が存在した可能性も示唆されています。
廃寺となった末寺
本要寺:細島八幡に所在
日高寺:細島高々谷に所在
本建寺:日知屋亀崎に所在
蓮光坊:細島庄手向、細島八坂に所在(詳細不明)
正受寺(松寿寺):細島地蔵、細島清正、日知屋平野、日知屋梶木に所在(詳細不明)
現存している別院
塔頭ではありませんが、妙国寺の別院として設立された
寺院です。
龍雲寺:児湯郡都農町に所在
智浄寺:児湯郡川南町に所在
行事
妙国寺では、年間を通して様々な行事が執り行われています。
1月1日:新年祝祷会
1月中旬:
大黒天・
毘沙門天祭
2月
節分:星祭
節分会
3月啓蟄:
水神祭読経会
3月春分:八大龍王講、春季
彼岸会
5月1日:花祭り、
鬼子母神大祭
8月2日:
施餓鬼会
8月15日:
盂蘭盆会、
精霊流し
9月秋分:八大龍王講、秋季
彼岸会
11月1日:おはぎ祭り(
龍口法難会)
11月23日:お会式
12月31日:歳末水行会、浄焚式(お焚き上げ)
所在地
宮崎県日向市細島373
脚注
関連項目
富士門流
興統法縁会
本東寺
定善寺
本永寺
上行寺
日本の
寺院一覧
外部リンク
*
日向市ホームページ(妙国寺)