日常生活動作

日常生活動作（ADL）とは

日常生活動作（ADL：Activities of Daily Living）とは、人が日常生活を送る上で欠かせない基本的な動作を指します。具体的には、食事、更衣、移動、排泄、整容（洗面、歯磨き、整髪など）、入浴などが含まれます。ADLは、人が自立した生活を送るための基礎となるものであり、健康状態や生活の質を測る上で重要な指標となります。

ADLは、単に「動作」としてだけでなく、その活動を意味する「日常生活活動」という言葉も用いられます。文脈に応じて使い分けられますが、意味するところは同じです。また、より複雑な行為や動作は、手段的日常生活動作（IADL）として区別されます。

ADLは、リハビリテーションの分野で患者の機能障害を評価したり、治療効果を測定したりするために用いられてきました。近年では、高齢者の生活機能を測る尺度としても活用されています。ADLの評価は、介護保険の認定においても重要な役割を果たしており、それぞれの動作を自立から全介助まで段階的に評価することで、要介護度が決定されます。

ADLの評価尺度

ADLを評価するための尺度はいくつか存在します。代表的なものとしては、以下のものがあります。

WHODAS（健康と障害の評価）：世界保健機関（WHO）が作成した、健康状態と障害を評価するためのツールです。
バーセル指数：ADLを評価するための最も基本的な指標の一つです。食事、移動、整容、排泄、入浴などの項目を評価します。
DPC（診断群分類包括評価）：医療費の算定に用いられる制度で、ADLの評価も含まれます。
ADLスコア：食事、移乗、整容、トイレ動作、入浴、歩行、階段、更衣、排便管理、排尿管理の10項目で評価する100点満点の指標です。
ECOG Performance Status：がん患者の全身状態を評価するための指標で、ADLレベルに応じて0～4の5段階で評価します。
機能的自立度評価法（FIM）：ADLを評価するための指標で、セルフケア、移乗、移動、コミュニケーション、社会的認知の5つの領域を評価します。アメリカを中心に国際的に普及しています。

これらの評価尺度は、リハビリテーションの現場や介護の現場で、患者や高齢者の生活自立度を把握し、適切な支援を行うために活用されています。

ADL向上のための取り組み

ADLは、単に能力を回復させるだけでなく、装具や福祉用具を活用したり、住環境を整備したりすることでも向上させることができます。障害者や高齢者でも健常者と同じように生活できるよう、環境を整えることが重要です。このような考え方は、ユニバーサルデザインと呼ばれています。

ADLに関連する情報

ADLは、クオリティ・オブ・ライフ（QOL：生活の質）と密接に関連しています。ADLが向上することで、QOLの向上も期待できます。また、ADLは、国際生活機能分類（ICF）においても重要な要素の一つとして位置づけられています。

ADLは、高齢化が進む現代社会において、ますます重要になっていくと考えられます。ADLの維持・向上は、健康寿命を延ばし、誰もが自分らしく生活できる社会を実現するために不可欠な取り組みです。

関連項目

セルフケア
クオリティ・オブ・ライフ
国際生活機能分類
要介護認定

外部リンク

* 医療法人社団ビジョナリー・ヘルスケア川崎高津診療所 9.在宅患者のADL評価

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