日映 (映画会社)

日映株式会社：知られざる映画製作・配給会社の軌跡

日映株式会社は、1960年代後半から1970年代前半にかけて存在した、日本の映画製作・配給会社です。設立当初は「日映企画」という名称で活動していましたが、現存する同名の会社とは無関係です。創業者である上松宗夫の名を冠した「上松プロダクション」名義でも作品を製作していました。

設立と初期の活動

1967年3月、上松宗夫は矢野正富と共同で「日映企画」を設立し、東元薫監督の『激しい関係』と『素肌の罠』を製作・公開しました。同年7月1日には、正式に日映株式会社として設立されました。設立当初は、東京都千代田区外神田にオフィスを構え、上松宗夫が代表取締役社長を務めました。

日映企画時代には、松田武美が企画としてクレジットされる作品もありました。松田は、アンダーグラウンドシアター蠍座が発行した『足立正生シナリオ集』の編集者でもあり、後に蠍座を経営していた三和興行の総務部長に就任しています。

東元薫は、梅沢薫の別名であり、日映では東元名義で数多くの作品を監督しました。日映企画名義では、『処女の烙印』などの作品を手がけました。また、ワールド映画が製作した『泣きどころ』には、「日映フィルム」名義で企画としてクレジットされています。

製作・配給体制の確立

1967年7月1日の設立以降、日映は積極的に映画製作・配給を行いました。『女の味』や『女高生の絶叫』など、初期の作品は「日映企画」名義で製作されました。1968年4月公開の『急所攻め』以降、製作時には「上松プロダクション」、配給時には「日映」とクレジットを分けるようになりました。これは、より明確な役割分担を行うための方針変更と考えられます。

1969年には、『好色坊主四十八手斬り』を公開しましたが、この作品は、当初『好色座頭市四十八手斬り』として準備されていたものが、大映からの興行禁止の訴えによって改題されたという経緯があります。この一件は、日映が大手映画会社と対立する形で作品を製作していたことを示唆しています。

東元薫の離脱と監督陣の変化

1969年5月には、『黒毛の沼』を最後に、東元薫（梅沢薫）が日映を去りました。その後、日映では水野洽、林新一郎、野川宏などが監督を務めました。1971年前半には林新一郎が、後半からは笠原和郎が独占的に監督作を発表しました。笠原は、「岡本愛」名義でも作品を監督しており、同一人物であることがわかっています。

日映は、日活が成人映画路線に転換した際にも、作品供給は行いませんでした。また、大蔵映画を中心とした「OPチェーン」や、国映・日本シネマ・葵映画・東京興映を中心とした「新東宝興業」などの配給網にも参加せず、独自の路線を貫きました。

活動停止と再評価

1973年8月公開の『女の本丸攻め』以降、日映の製作・配給作品は見られなくなりました。1975年前後には活動を停止したと考えられています。

2013年には、神戸映画資料館で「ピンク映画50周年 特別上映会 映画監督・渡辺護の時代」と題した特集上映が開催され、日映が製作した『三日三晩裏表』と『男と女の肉時計』が上映されました。この上映は、日映の作品が再評価されるきっかけとなりました。

企業データ

社名：日映株式会社
所在地：東京都千代田区外神田6丁目16番9号 緒方ビル
代表取締役社長：上松宗夫
事業内容：映画の製作・配給
資本金：600万円
設立：1967年7月1日

主なフィルモグラフィ

日映は、成人映画を中心に数多くの作品を製作しました。以下に主な作品を記載します（特記以外は製作）。

1967年：『激しい関係』、『素肌の罠』（配給）、『処女の烙印』、『泣きどころ』（企画）、『女の味』、『女高生の絶叫』、『激しい交歓』、『強烈な…青い穴』、『刑法177条 婦女暴行男』、『真赤な獣欲』、『夜の千人斬』、『人生四十八手 裏表』
1968年：『肉風呂』、『急所攻め』、『陰乱』、『寝わざ師』、『刑法177条 婦女脅迫暴行罪』、『新・人生四十八手・裏表』、『未亡人責め』、『女責め たらい廻し』、『穴地獄』、『肉責め』、『穴じかけ』、『血の暴行』、『夜の歓楽境 あな探し』、『男と女の肉時計』、『未亡人ご指名 夜の本番』
1969年：『夜の技巧』、『三日三晩裏表』、『好色坊主四十八手斬り』、『火の女 昼も夜も』、『寝強犯』、『悶え狂い』、『情事のデザイン』、『黒毛の沼』、『ためいき』、『しびれ泣き』、『女子学生の記録 気絶』、『モーレツかけもち女』、『好色温泉記 四畳半芸者』、『愛欲絵巻 色の入口』、『激しく抱いて』、『人生四十八手 色上手』
1970年：『泣き上手 枕妻』、『びしょ濡れ女』、『夜なき布団』、『これが人生四十八手だ』、『行くまで待って』、『ハレンチ㊙女風呂』、『ブルーセックス』、『夜はあなただけに』、『愛して抱いて』、『甘いクライマックス』、『未公開のセックス』
1971年：『愛の人生四十八手』、『アベック・ベッド』、『愛の夫婦生活』、『やさしく抱いて』、『好きならみんなあげる』、『SEX㊙大全集』、『婦人科㊙物語』、『8ミリの部屋 うめき』、『㊙フィルムの女』、『ポルノSEX大百科』
1972年：『㊙温泉SEX風呂』、『恍惚の湖 愛の終着駅』、『金髪美女の白い肌 一晩中抱いて』
* 1973年：『恍惚の密室』、『㊙乱行パーティ』、『トルコ㊙セックス』、『愛の桜貝』、『女の本丸攻め』

まとめ

日映株式会社は、1960年代後半から1970年代前半にかけて、成人映画を中心に独自の路線を歩んだ映画製作・配給会社です。設立当初は「日映企画」という名称で活動し、後に「上松プロダクション」名義でも作品を製作しました。東元薫（梅沢薫）などの監督が活躍しましたが、1970年代中頃には活動を停止しました。しかし、近年、過去の作品が再評価される動きも見られます。

日映の作品は、東京国立近代美術館フィルムセンターやデジタル・ミームには所蔵されていません。しかし、神戸映画資料館での上映などにより、その歴史が再認識されつつあります。

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