日本とモンゴルの関係

日蒙関係

日本とモンゴルとの関係は、13世紀のモンゴル帝国（元朝）による日本への侵攻という形で始まりました。この侵攻は、いわゆる「元寇」として知られ、日本の歴史に大きな影響を与えました。その後、両国は長らく正式な国交を結ぶことはありませんでしたが、20世紀後半になって国交を樹立し、現在では友好的な関係を築いています。

歴史

モンゴル帝国の侵攻

13世紀、モンゴル帝国は高麗（現在の朝鮮半島）を制圧した後、皇帝クビライ（元の世祖）の意向により日本への侵攻を計画しました。クビライは1268年に使節団を日本に派遣し、日本の「王」に対してモンゴル帝国への臣従を求めましたが、この使節団は無視または追い返されました。これを受けて、クビライは1274年に大規模な軍隊を派遣し、最初の侵攻である文永の役が始まりました。

文永の役

1274年10月、モンゴル軍は船900艘、兵士20,000人からなる軍隊を送り込み、対馬海峡を通って対馬へと侵攻を開始しました。対馬と壱岐を制圧した後、博多湾へと上陸し、博多の町を焼き払いました。しかし、撤退途中に暴風雨に見舞われ、船団が崩壊するなど、侵攻は散々な結果に終わりました。この時の暴風雨は、後に「神風」と呼ばれるようになります。

弘安の役

クビライは日本侵攻を諦めず、1281年に二度目の侵攻を敢行しました。この弘安の役では、日本側は元寇に備えて元寇防塁を築くなど周到な準備をしており、モンゴル軍に大きな打撃を与えました。クビライは、1279年に征服を完了した旧南宋の船団からなる新たな船団を組織し、高麗から提供された軍船を加えて、兵力約15万、軍船約4400艘からなる大軍を日本へと派遣しました。高麗の船団は、旧南宋の艦隊が到着する以前に博多に到着し、侵攻を開始しましたが、失敗に終わりました。その後、旧南宋の船団が到着し、同じく博多に侵攻しましたが、やはり日本を征服することはできませんでした。8月15日には、文永の役と同様に「神風」と呼ばれる台風が来襲し、旧南宋の船団は散り散りとなり、日本侵攻は完全に失敗に終わりました。

元寇後

元寇後も日元貿易は継続していましたが、元が明によって中国本土から追われると、両者の関係は途絶えることになりました。

20世紀前半

20世紀初頭、日本が日清戦争に勝利し新興勢力として台頭したことがきっかけとなり、数世紀にわたりモンゴルを支配していた清が崩壊しました。1911年に外蒙古が独立すると、ボグド・ハーン政権は世界各国に国交樹立を求め、日本にも使節団を派遣しましたが、いずれも失敗に終わりました。その後、モンゴルはソ連の影響下に置かれ、社会主義国家となりました。一方、中華民国領土に残った内モンゴルは、日中戦争中に日本の占領下に置かれました。1939年のノモンハン事件や1945年のソ連対日参戦では、モンゴル人民軍が日本軍と戦火を交え、モンゴルは内モンゴル東部から西部まで占領し、戦勝国となりました。

20世紀後半

第二次世界大戦後、日本とモンゴルの関係は途絶えていましたが、1961年にモンゴルが国際連合に加盟した際に、事実上国家として承認されました。1972年2月19日に国交が開設され、1977年には経済協力協定が結ばれました。1989年には宇野宗佑外務大臣がモンゴルを訪問し、1991年には海部俊樹首相がモンゴルを訪問するなど、両国間の交流が活発化しました。

21世紀

21世紀に入り、日本とモンゴルの関係はさらに良好なものとなっています。2004年の世論調査では、モンゴル国民の多くが日本に親しみを感じており、「最も親しくすべき国」として日本を第一位に挙げています。2007年には皇太子徳仁親王（現・今上天皇）がモンゴルを訪問しました。2011年の東日本大震災の際には、モンゴルから多くの支援が寄せられ、国家公務員が給与の一部を寄付したり、孤児院から義援金が送られるなど、心温まるエピソードが数多くありました。

近年では、モンゴル人留学生が日本の高等専門学校に留学するケースが増えており、モンゴル国内で日本の高等専門学校教育を導入する機運が高まっています。2014年には、ウランバートルに複数の高等専門学校が開校しました。また、経済面でも、2008年に新国際空港建設のための融資が実行され、2021年に開港しました。2016年には、日本とモンゴルの経済連携協定が発効し、両国間の経済交流がさらに活発化しています。

貿易

2011年時点の二国間の貿易額は、日本からの輸出額が256.89億円、輸入額が14.05億円となっています。日本への主要輸出品目は、石炭や蛍石などの鉱物資源、繊維製品などであり、日本からの主要輸出品目は、自動車や建設・鉱山用機械などです。

交流

2021年時点で、在日モンゴル人は12,976人、在モンゴル日本人は321人となっています。

スポーツ

日本の国技である相撲においては、1990年代以降、多くのモンゴル人力士が来日し活躍しています。朝青龍、白鵬、日馬富士、鶴竜、照ノ富士の5人の横綱を輩出しており、これは平成以降では一ヶ国・一都道府県の出身横綱として最多であり、47都道府県を合わせた日本出身横綱全体の人数よりも多い数です。また、柔道やボクシング、陸上競技などの分野でも、モンゴル人選手が活躍しています。

外交使節

日本とモンゴルの間には、相互に大使館が設置されており、両国間の外交関係を円滑に進めるための重要な役割を果たしています。以下に、過去の駐日モンゴル大使の一覧を記載します。

ニャミーン・ルヴサンチュルテム（1972～1974年）
ソノムドルジーン・ダンバダルジャー（1974～1978年）
デンゼンギーン・ツェレンドンドブ（1978～1985年）
ブヤンティーン・ダシツェレン（1985～1990年）
ダラミーン・ヨンドン（1990～1992年）
バダム＝オチリーン・ドルジンツェレン（1992～1996年）
ソドブジャムツ・フレルバータル（1997～2001年）
ザンバ・バトジャルガル（2001～2005年）
レンツェンドーギーン・ジグジッド（2006～2011年）
ソドブジャムツ・フレルバータル（2012～2017年、再任）
ダンバダルジャー・バッチジャルガル（2018～2023年）
バンズラグチ・バヤルサイハン（2023年～）

参考文献

Sanders, Alan J. K. (2010). "Japan: Relations with Mongolia". Historical Dictionary of Mongolia. Historical Dictionaries of Asia, Oceania, and the Middle East. Vol. 74 (3rd ed.). Scarecrow Press. ISBN 9780810861916.

関連項目

在モンゴル日本国大使館
駐日モンゴル国大使館、在大阪モンゴル国総領事館
松崎陽
キラー・カーン
ハワリンバヤル
在日モンゴル人

外部リンク

駐日モンゴル国大使館
在モンゴル日本国大使館
二国間関係 - モンゴル国 外務省

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