キラー・カーン

キラー・カーン：蒙古の怪人、波乱万丈の生涯



キラー・カーン（本名：小澤正志）は、1947年3月6日に新潟県で生まれ、2023年12月29日に76歳で亡くなった元大相撲力士、そしてプロレスラーです。その強烈な個性を放つモンゴリアンギミックで、国内外のプロレスファンを魅了しました。

大相撲からプロレスへ



新潟県立吉田中学校卒業後、バスケットボール選手を目指しましたが挫折。その後、体格の良さを活かすため春日野部屋に入門し、1963年3月場所に「小沢将志」として初土俵を踏みました。四股名は「越錦」を名乗り最高位は幕下40枚目。しかし、相撲では伸び悩み、1970年5月場所を最後に廃業しました。大相撲時代には、後の玉ノ井親方である元関脇・栃東の付き人を務めていました。

プロレスラーとしての転身



1971年1月に日本プロレスに入門。整形外科での偶然の出会いがきっかけでした。怪我で通院していた際、同じく通院していた北沢幹之に「プロレスラーにならないか」と誘われたのです。一度は親方に辞めさせて貰えませんでしたが、夜逃げ同然で日本プロレスへ。腰痛を完治後、テスト生として入門を許可されました。吉村道明の付き人を務め、1971年6月26日に小沢正志のリングネームで木戸修を相手にデビュー。その後、坂口征二の付き人を経て、1973年4月には坂口らと共に新[[日本プロレス]]へ移籍しました。新日本では、リトル浜田との対戦などで前座戦線を賑わせ、1974年12月のカール・ゴッチ杯争奪リーグ戦では藤波辰巳と決勝を争うなど、ヘビー級の有望株として活躍しました。

海外修行とモンゴリアンギミック



1976年8月にはドイツへ遠征、1978年からはメキシコに渡り、テムジン・エル・モンゴル（Temjin El Mongol）を名乗りモンゴル人レスラーへと変身。1979年3月からはアメリカのNWA圏のフロリダ地区で「キラー・カーン」に改名し、辮髪に髭、毛皮のベストとモンゴル帽子という独特のモンゴリアンスタイルを確立しました。このモンゴル人ギミックとリングネームは、カール・ゴッチ、エディ・グラハムら５人のアイデアによるものでした。フロリダではパク・ソンらと共闘、ヒールとして活躍。ローデスやブリスコ兄弟らと激しい抗争を展開しました。1980年にはジョージア地区でもヒールとして活躍。アブドーラ・ザ・ブッチャー、イワン・コロフらとタッグを組み、スタン・ハンセンとも対戦しました。

WWFでの活躍とアンドレ・ザ・ジャイアントとの抗争



1980年末からはWWFに参戦。フレッド・ブラッシーをマネージャーに、ボブ・バックランドのWWFヘビー級王座やペドロ・モラレスのインターコンチネンタル王座にも挑戦しました。1981年にはアンドレ・ザ・ジャイアントとの抗争が勃発。5月2日には、アンドレの右足をニー・ドロップで骨折させたとされ、ヒール人気が急上昇しました。実際にはアンドレがアクシデントで負傷しており、カーンが試合を成立させるためにトップロープからニー・ドロップを決めたという経緯でした。この事件は、カーンを一躍世界的なメインイベンターへと押し上げました。

凱旋帰国と維新軍時代



WWFでの活躍直後の1981年3月には日本に凱旋帰国。アントニオ猪木とのタッグでハルク・ホーガンらと対戦し、日本のプロレスファンにも強烈な印象を与えました。1982年にはアンドレとの因縁の対決も行われました。1983年からは斎藤や長州力らと共に維新軍の前身である革命軍を結成し、新[[日本プロレス]]の反体制勢力として活動。ブラックジャック・マリガンとタッグを組むなど、大型選手として存在感を示しました。海外でのアンドレとの抗争も継続し、各地で激しい試合を展開。1983年下期からは戸口と共に維新軍に加入、新日本正規軍との軍団抗争を繰り広げました。

ジャパンプロレスと全[[日本プロレス]]



1985年には長州らが設立したジャパンプロレスに参画し、全[[日本プロレス]]のリングにも登場。ロード・ウォリアーズやジャンボ鶴田＆天龍源一郎組とのタイトル戦も行いましたが、1986年5月にジャパンプロレスを離脱。世界最強タッグ決定リーグ戦にはテリー・ゴディと組んで出場しました。この時期には、KKK風のコスチュームやロード・ウォリアーズ風のペイントなど、ヒールとしてのキャラクターをさらに強調しました。

WWF再契約と引退



1987年4月に全[[日本プロレス]]を去り、WWFと再契約。ミスター・フジをマネージャーに、ハルク・ホーガンとの抗争を展開しました。ランディ・サベージらとも対戦しましたが、11月末に現役を引退しました。引退の理由は、ジャパンプロレスの分裂騒動に嫌気がさしたことでした。ホーガンやビンス・マクマホンから慰留されたものの、復帰はしませんでした。

引退後の活動



引退後は「キラー・カン」のまま、東京都新宿区に飲食店「スナックカンちゃん」を開店。その後、西新宿や歌舞伎町で「ちゃんこ居酒屋 カンちゃん」などを経営しました。2005年には歌手としてもデビュー。バラエティー番組などのメディアにも出演し、幅広く活躍しました。2013年には、故郷である燕市の『燕市PR大使』にも任命されました。

2014年には転倒により頚椎を損傷する重傷を負いましたが、懸命なリハビリで回復。2021年には、新大久保の店舗を閉店しましたが、2023年には西新宿に「カンちゃんの人情酒場」をオープン。2022年にはS状結腸がんを患っていることを公表しました。

死去



2023年12月29日、勤務中に体調を崩し、動脈破裂のため死去。76歳でした。葬儀は家族葬で営まれ、多くのプロレスファンが彼の死を悼みました。経営していた居酒屋は閉店する予定でしたが、ファンの要望により「お別れの会」として特別営業を行い、多くの人々が別れを惜しみました。

得意技




獲得タイトル



  • - NWA USタッグ王座（フロリダ版）
  • - ミッドサウス・ルイジアナ・ヘビー級王座
  • - ミッドサウス・ミシシッピ・ヘビー級王座
  • - スタンピード北米ヘビー級王座
  • - WCCW TV王座

マネージャー



  • - タイガー服部（CWF）
  • - ソニー・キング（CWF）
  • - ゴージャス・ジョージ・ジュニア（GCW）
  • - グレート・メフィスト（GCW）
  • - フレッド・ブラッシー（WWF）
  • - スカンドル・アクバ（MSWA、WCCW）
  • - ゲーリー・ハート（WCCW）
  • - 将軍KYワカマツ（スタンピード・レスリング）
  • - ミスター・フジ（WWF）

エピソード



  • - 吉田中学校時代はバスケットボールで活躍
  • - カール・ゴッチ杯で藤波辰爾と決勝を争う
  • - ジャイアント馬場も愛した美声の持ち主で、三橋美智也に師事。
  • - ビートたけしからMVPの称号を受ける
  • - 尾崎豊が「スナックカンちゃん」の常連客
  • - WWF参戦時の収入は週給600万円
  • - アメリカで体重を増やし体格が向上
  • - 引退後、天龍源一郎から復帰を打診されるも断る
  • - 視力が悪く、それが悪役としての個性を強調した


主な出演作品




ディスコグラフィー



  • - ふるさと真っ赤っか／上越線は男の鉄路
  • - 新宿三百六十五夜／夕月子守歌
  • - カンちゃんの人情酒場／カンちゃんののれん酒

著書



  • - "蒙古の怪人"キラー・カーン自伝

キラー・カーンは、大相撲からプロレスへ転身し、その独特なキャラクターと強烈な個性で、多くのファンを魅了しました。彼の波乱万丈な人生は、これからも多くの人々に語り継がれることでしょう。

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