日本国際美術展

日本国際美術展

日本国際美術展（にほんこくさいびじゅつてん）、通称「東京ビエンナーレ」は、1952年に創設された、日本およびアジア初の国際的な美術展です。隔年開催の原則に基づき、1990年までに合計18回にわたり行われました。特に、1970年の第10回展「人間と物質」は、日本美術史における重要な出来事として知られています。

概要

サンフランシスコ講和条約が発効し、日本が主権を回復した1952年、この新たな美術展は毎日新聞社の主導で設立されました。最初の展示が終わった翌年の1953年には第2回が開催され、以降はビエンナーレ方式で隔年開催が行われることとなりました。また、第10回展では、それまでの国別展示形式が見直され、国内外のアーティストによるテーマ展示が実施されました。1978年に行われた第12回展からは、国内部門が公募制に、外国部門は一国招待制となり、その後は特に若手アーティストにとっての登竜門としても知られるようになりました。このため、「毎日国際」とも称されています。

第10回「人間と物質」展

1970年5月、東京都美術館にて開催された第10回展は、6月に京都市美術館、7月に愛知県美術館、そして8月に福岡県文化会館を巡回しました。展覧会のテーマや参加作家を選定する役割には、美術評論家の中原佑介が総コミッショナーとして任命され、彼のもとで毎日新聞社に勤務していた美術評論家の峯村敏明も組織運営に携わりました。今回の展覧会には、外国から27名、日本から13名の合計40名のアーティストが「人間と物質：Between Man and Matter」というテーマのもと集結しました。

この国際展は、当時のヴェネツィア・ビエンナーレが学生の反対運動によって混乱したことを受けて開催され、ナショナリズムの競争としての側面を強調していました。そのため、第10回展は当初の予定を一年延長し、国別参加制や受賞制度、そしてジャンル別展示形式を廃止し、コミッショナー制が新たに導入されました。中原は国際視察を行い、1969年にスイスのクレストハレで開催された企画展の影響を強く受けました。この展覧会には多くの作品が未完成の状態であり、参加アーティストのうち75％が展覧会の現場で制作を行いました。特に海外から参加したアーティスト17名が来日し、また公園など美術館外にも作品が設置されるなど、多様性に富んだ展示が行われたことが特徴的です。

この展覧会では、アルテ・ポーヴェラ、もの派、コンセプチュアリズム、ミニマリズムなどの当時の先端的な美術動向が広く紹介され、もの派の問題意識が国際的文脈に位置づけられるきっかけともなりました。これにより、後年の美術史において、重要な評価を受けることとなったのです。

参加作家

この展覧会には、ディートリッヒ・アルブレヒト、カール・アンドレ、ブゼム、ダニエル・ビュラン、クリスト、ヤン・ディベッツ、ヘル・ファン・エルク、榎倉康二など多くの著名なアーティストが参加しました。さらに、成田克彦（もの派）、リチャード・セラ、松沢宥といった個性豊かな作家も展示に加わり、それぞれが国際的な舞台での存在感を示しました。

文献と外部リンク

この歴史に関心がある方は、以下の文献やリソースを参照して、新たな視点や理解を深めることができます。たとえば、山下晃平の『日本国際美術展と戦後美術史』や中原佑介の美術批評選集などが有名です。また、慶應義塾大学アート・センターの東京ビエンナーレ1970研究プロジェクトも貴重な情報源となります。

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