日本製鉄北日本製鉄所

日本製鉄北日本製鉄所は、2022年 4月1日に室蘭製鉄所と東日本製鉄所釜石地区が統合して発足した、日本製鉄株式会社の製鉄所です。北海道の室蘭地区と岩手県の釜石地区の二つの拠点から構成され、それぞれが独自の歴史と特色を持っています。

室蘭地区

室蘭地区は、1909年の操業開始以来、北海道で唯一の「銑鋼一貫製鉄所」として、長年にわたり鉄鋼製品を供給してきました。1985年に普通鋼から特殊鋼の棒鋼・線材へと生産品種を転換し、高炉と電炉が共存するコンビナートを形成しています。ここでは、製鉄事業を中心に、鋼材加工事業やシステム・エンジニアリング事業が展開され、日本製鉄グループの企業が集積しています。

主力製品である特殊鋼棒鋼や特殊鋼線材は、自動車のエンジンや足回りの保安部品といった重要な部品に使用されています。また、構内のインフラストラクチャーを活用したプラスチックリサイクル事業など、環境産業にも注力しているほか、独立系発電事業者（IPP）として北海道電力へ電力を供給しています。構内には、ポリ塩化ビフェニル（PCB）廃棄物処理事業を行う中間貯蔵・環境安全事業（JESCO）の北海道PCB処理事業所も操業しています。

特殊鋼への注力

室蘭製鉄所が特殊鋼を手掛け始めたのは1974年の棒鋼工場稼働からですが、国産初の連続鋳造機を稼働させるなど、高度な技術力を背景に、自動車重要保安部品用の特殊鋼棒鋼の連続鋳造化を業界で初めて実現しました。VHミルや調整冷却・精密圧延など、業界を先駆けた設備を導入し、特殊鋼生産に最適な体制を確立しています。

主要製造設備

製銑（高炉）：2,902 m³×1基（第2高炉）
製鋼：予備処理、転炉（270T/CH×2基）、連続鋳造機、精錬設備（二次精錬）
圧延：全連続VHミル+高剛性3ロール仕上ミル（棒鋼工場）、全連続VHミル+NTブロックミル+高精度仕上ミル（線材工場）

歴史

室蘭製鉄所は、1909年に北海道炭礦汽船（北炭）の輪西製鐵場として操業を開始しました。日露戦争後の鉄鋼需要増加に対応するため、日本初の砂鉄精錬による溶鉱炉を建設しましたが、操業当初は困難も伴いました。第二次世界大戦中は軍需生産を支え、戦後は富士製鐵、新日本製鐵へと変遷し、2012年に新日鐵住金室蘭製鐵所、2019年に日本製鉄室蘭製鉄所となり、2022年の組織再編で現在の北日本製鉄所室蘭地区となりました。

釜石地区

釜石地区は、日本の近代製鉄業発祥の地であり、八幡製鐵所よりも早く操業を開始した日本最古の製鉄所です。1880年に官営製鉄所として操業を開始しましたが、当初は成果が上がらず閉鎖されました。その後、田中長兵衛に払い下げられ、1886年以降に軌道に乗りました。戦前は大規模な製鉄所でしたが、戦時中の釜石艦砲射撃で壊滅的な被害を受けました。戦後復興し、富士製鐵の主力製鉄所の一つとなりましたが、1989年に高炉を休止し、現在は銑鋼一貫製鉄所ではありません。

現在は線材の生産拠点として、多種多様な線材を製造しています。また、日本製鉄の独立発電事業（IPP）の拠点として、火力発電所を設置し、東北電力へ電力を供給しています。13万6,000kWの出力は岩手県内で最大であり、2015年からは木質バイオマス燃料の使用を開始しています。

主要製造設備

圧延：全連続HHミル+NTブロックミル+ミニブロックミル（線材工場）
エネルギー工場（火力発電所）：定格出力13.6万kW

歴史

釜石における製鉄の歴史は、1858年に大島高任が日本で初めて高炉法で出銑に成功したことに始まります。1880年に官営釜石製鉄所が発足しましたが、1883年に閉鎖。その後、田中長兵衛が製鉄所の一部設備の払い下げを受け、1886年に製鉄所として初めての出銑に成功しました。1934年に日本製鐵釜石製鉄所となり、戦後の1950年に富士製鐵釜石製鐵所、1970年に新日本製鐵釜石製鐵所、2019年に日本製鉄釜石製鉄所、そして2022年に現在の日本製鉄北日本製鉄所釜石地区となりました。

アクセス

室蘭地区：道南バス・北海道中央バス「日鉄前」バス停下車、またはJR輪西駅から車で約7分
* 釜石地区：JR釜石線・三陸鉄道リアス線、釜石駅下車徒歩5分

日本製鉄北日本製鉄所