日産・パオ

日産自動車のパオ（PAO）

パオは、日産が1989年にリリースした小型乗用車であり、そのデザインは旅行や冒険をテーマにしています。この車は、同社のK10型マーチをベースとしたパイクカーシリーズの第二弾にあたります。製造は愛知機械工業の永徳工場で行われました。

デザインとコンセプト

デザインのコンセプトを担当した坂井直樹は、「バナナ・リパブリック」の旅行とサファリを楽しむための服飾ブランドの思想を取り入れて、車体のデザインに反映させようとしました。パオの外観は、上下に分かれたデザイン、フリップアウト式のリアクオーターウインドウ、ガラスハッチを持つバックドア、開閉式の三角窓、外ヒンジのドアといった特徴を持っており、これらはシトロエン・2CVやルノー・4を連想させるレトロなスタイルを醸し出しています。

デザイナーは、安全性を考慮しながらもフロントドアのヒンジを見せる方針を取り入れました。色合いについてはアクアグレー、オリーブグレー、アイボリー、テラコッタといったアーシーな色合いが採用され、天然素材をイメージさせる優しさを持ち合わせています。

内装と素材

内装はK10型マーチの「コレット」と同様、麻布のような風合いを持ったシート表皮が用いられ、外観との一体感が表現されています。一見ノスタルジックな見た目とは裏腹に、パオのボディ外板には革新素材と工法が採用されています。フロントフェンダーとエプロンには熱可塑性樹脂が用いられ、エンジンフードにはSMC成形樹脂が適用されています。これにより、軽量化とともにボディの強度向上が図られています。また、耐白錆性を持たせるため、さまざまな鋼材が適切に使用されています。

走行性能

走行性能にも工夫が施されており、基本的な操縦安定性を確保しつつ、フランスの大衆車のような柔らかい乗り心地が得られるように設定されています。エアコンやステレオなどはオプションで提供されていますが、ステレオシステムには専用のデザインが施されており、時代を先取りしたCDチューナーの採用も特色の一つです。

販売実績

パオの初めてのモデルである「Be-1」は、予想以上の反響で発売後すぐに完売となりました。その成功を受け、パオでは受注期間を設けて顧客のニーズに応えました。この結果、51,657台という驚異的な数の受注を記録し、納期は最長1年半に達しました。総生産台数は31,321台となり、パイクカーシリーズの中で最も多く生産されました。

歴史と販売終了

初代PK10型パオは、1989年に発表され、委託生産が始まりました。その後、同年1月に販売が開始され、12月には生産が終了しました。そして1991年には、在庫分が全て完売し、販売が終了しました。

車名の由来

パオの名前は中国語の「包(パオ)」に由来し、モンゴルの遊牧民の住まいであるゲルを意味します。この名前が示すように、パオは冒険心と旅への憧れを体現した車なのです。

関連項目

• - 日産・Be-1
• - 日産・マーチ
• - 日産・フィガロ
• - 日産・ラシーン
• - 日産・エスカルゴ
• - 愛知機械工業

このように、パオはただの小型車に留まらず、デザインと機能性を兼ね備えた魅力的な自動車として、多くのファンに愛され続けてきました。

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