愛知機械工業

愛知機械工業株式会社

愛知機械工業株式会社は、愛知県名古屋市に本社を置く自動車部品メーカーです。主にエンジン、マニュアルトランスミッションなどの自動車部品や産業用部品を製造しています。日産自動車の機能子会社であり、プラントコードは「4」です。かつてはオート三輪「ヂャイアント」や軽自動車「コニー」を製造・販売していました。

歴史

前史

愛知機械工業は、愛知時計製造株式会社（現在の愛知時計電機）から航空機部門が分離した愛知航空機株式会社を前身としています。1945年8月15日の終戦により、民需転換が行われました。

完成車メーカー時代

1946年以降、「ヂャイアント」や「コニー」の商品名でオート三輪および軽商用車メーカーとして知られるようになりました。オート三輪では、水冷エンジンや丸ハンドル、全天候型キャビンを業界内でいち早く採用しました。軽商用車では、ミッドシップ（当時はアンダーフロアと呼ばれた）レイアウトを採用するなど、先進的な設計が特徴でした。

1961年以降、全日本自動車ショーに試作軽乗用車「コニー・360コーチ」を出品し、乗用車市場への進出を試みました。超小型車「コニー・グッピー」を発売しましたが、販売は予想を大きく下回り、業績には結びつきませんでした。1962年 9月決算では1.4億円の営業赤字を計上し、無配に転落しました。その後、メインバンクの日本興業銀行（当時）の仲介により、日産自動車と1962年 11月に技術提携を締結しました。

1965年 3月には、日産自動車と本格的な業務提携に入り、2代目社長であった五明得一郎が相談役に退任し、日産自動車の購買担当常務であった堀庫治郎が社長に就任しました。日産の持株比率は1966年9月末には15%となり、筆頭株主となりました。日産自動車は、当初から愛知機械工業を軽自動車メーカーではなく、車両やエンジンの生産委託先および協力メーカーとして活用する方針でした。日産出身の社長として、初代の堀庫治郎や後任の小畠三郎も生産技術者でした。日産の指導の下、原価管理などのノウハウが導入され、労働組合も「民主化」の結果、自動車労連の傘下に入るなど「日産化」が急速に進みました。

1965年発売のコニー・360ワイド以降、新型車の開発はほとんど行われなくなりました。同業他社のスズキ、ダイハツ工業、1968年に日産自動車と提携した富士重工などとの熾烈な新型車開発競争や販売合戦から脱落しました。経営側は「利益確保優先」を掲げ、積極的な販売促進策を講じなかったことが、結果的に「再建の足かせ」と評されるようになりました。1970年 10月には自社ブランドでの自動車生産を撤退し、特別損失40億6800万円を計上したため、堀社長が引責辞任しました。愛知機械工業の販売系列であった「日産・コニー店」は、自社ブランドでの自動車生産から撤退と同時に、日産自動車が生産販売する新規車種のチェリーの発売に合わせて、「日産チェリー○○販売」に社名変更され、「日産・チェリー店」に販売系列が変更されました。

自動車生産の撤退後

日産・チェリーが3代目へのフルモデルチェンジを機にパルサーに車名変更された後も、「日産・チェリー店」の名称で存続し、広告上では「パルサー販売会社」または「パルサー販売」と称されていました。しかし、昭和60年代前半から平成初期にかけて、大半の「日産・チェリー店」が「日産・プリンス店」に統合され、現在の日産・レッドステージ系列販売会社の礎の一つとなりました。

自社ブランドでの自動車生産から撤退以降は、日産自動車の小型車のエンジン・トランスミッションの生産を手がけました。さらに、バネット、セレナ、ラルゴ、サニートラック、サニーキャブ/チェリーキャブ、パオの完成車開発・生産まで行いましたが、1999年2月に車両事業の継続が困難となったため、ユニット専門工場として再スタートを切るべく車両生産から撤退することが発表されました。2001年には、港工場が閉鎖され、完成車生産から撤退しました。当初は、永徳工場を閉鎖して生産設備を港工場に移設する予定でしたが、費用がかかるため、港工場の閉鎖に変更されました。港工場で生産されていたC24型セレナは2001年 3月より日産自動車栃木工場に移管されました。

現在は、エンジン・トランスミッションの生産専業に徹しており、完成車生産は行っていませんが、他メーカーへも販路を広げています。例えば、三菱・ランサーエボリューションVIIIの6速マニュアルトランスミッションは愛知機械製であり、日産以外の自動車企業との初の取引でした。現在では、軽自動車用のCVT（無段変速機）の他、三菱以外にマツダ、フォード・モーター、現代自動車、ルノー、プロトンにもマニュアルトランスミッションを納入しています。2007年1[[2月]]に発売された日産・GT-R用のGR6型デュアルクラッチトランスミッションも愛知機械製です。

沿革

1943年 2月 - 愛知時計製造株式会社（現在の愛知時計電機）から航空機部門が分離し、愛知航空機株式会社を設立。
1946年 3月 - 愛知起業株式会社に商号を変更。
1946年 1[[2月]] - オート三輪「ヂャイアント」製造販売権を帝国精機産業株式会社より譲り受ける。
1947年 4月 - ヂャイアントAA1型生産開始。
1947年 10月 - 現在の社章が正式に制定。
1949年 5月 - 愛知起業株式会社解散。第2会社が事業を引き継ぎ、新愛知起業株式会社を設立。
1952年 1[[2月]]1日 - 愛知機械工業株式会社に商号を変更。
1959年3月 - 自社ブランド軽自動車「コニー」製造・販売開始。初代AA27型は軽三輪車。
1960年 9月 - 「ヂャイアント」の製造・販売を終了。
1961年 5月 - 「コニーグッピー」を製造・販売開始。しかし、わずか1年足らずで生産終了。
1962年 11月 - 日産自動車と提携開始。
1965年 3月 - 愛知機械販売株式会社を設立。
1970年 2月 - B20型サニートラックを皮切りに日産車の生産を開始。
1970年 10月 - 「コニー」の製造を終了（1971年1月までに販売終了）。
2001年 3月 - 港工場でのセレナ製造を終了。車両製造から撤退
2012年 3月 - 日産自動車の完全子会社となる。

生産品目

エンジン

HR15DE/HR16DE
CR12DE/CR14DE
QG13DE/QG15DE/QG16DE/QG18DE
QR25DE
BR06

トランスミッション

FS6R31 - シンクロレブコントロール付き。日産・フェアレディZ Z34に搭載。
F30A/F70A/F50A/F51A/F52A
MFA60/MFA80
W60A
R30A/R31A
MRA70
GR6

生産設備

無人搬送車「CarryBee」
多機能モータセンサ

その他

電気自動車用減速機 - RE1F61Aが日産・リーフに搭載。

事業所

本社 - 愛知県名古屋市熱田区
熱田工場 - 愛知県名古屋市熱田区（エンジンの生産）
永徳工場 - 愛知県名古屋市港区（マニュアルトランスミッション、CVT加工組立）
大江工場 - 愛知県名古屋市港区（旧・日本車輌製造株式会社大江工場の敷地に建てられた。専用工作機械など）
津工場 - 三重県津市（シリンダーヘッド加工）
松阪工場 - 三重県松阪市（シリンダーブロック、シリンダーヘッド、トランスミッションケース等の鋳造製品）

かつての事業所

港工場 - 愛知県名古屋市港区（1981年 4月1日新設～2001年 3月31日閉鎖）（車両の生産）
石川島播磨重工業名古屋工場の一部を同社より譲り受け、既存の工場建屋を生かす形で1981年 5月から一部稼働するはずだったが当時の不況のあおりを受けて操業を延期。1983年5月から1年限定でダットサントラックの生産を始め、1984年3月に本格稼働開始。主にサニートラック、バネット、ラルゴ、セレナを生産。
現在はユー・エス・エスの自動車オークション会場（USS-R名古屋）と株式会社アビヅの自動車リサイクル工場になっている。

ブランド

完成車メーカーとして活動していた時代には、いくつかのブランドが用いられました。自社での事業撤退と共に廃止されています。
オート三輪の時代には「ヂャイアント」と「ヂャイアント・コニー」、軽4輪車に移行してからは「コニー」が使用されていました。

過去の生産車種

オート三輪

ヂャイアント

軽3輪商用車

ヂャイアント・コニー（コニーAA27）

軽4輪商用車

ヂャイアント・コニー360
ヂャイアント・コニー600
コニー・360
コニー・グッピー
コニー・360コーチ
コニー・360ワイド
61式特殊運搬車

脚注

参考文献

愛知機械工業編『愛知機械工業50年史』。

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