日産・プリンスロイヤル

プリンスロイヤル（Prince Royal）

プリンスロイヤルは、1967年から1972年にかけて日産自動車によって製造された日本のセダン型リムジンで、元々はプリンス自動車工業が開発したものです。この車両は宮内庁に納入され、日本の皇室が使用する特別な御料車としての地位を持っています。製造台数はわずか7台と非常に希少で、開発コードはS390-1、型式はA70型です。

歴史的背景

日本の皇室は1912年から自動車を導入し、以降は主に欧米の高級車を用いてきました。1930年代までは日本製の中・大型乗用車は充分な性能を持たず、戦後50年代にようやく自国車の生産が可能になりました。この中で、1960年代の高度経済成長期には国産車による御料車の製造が実現しました。中でもプリンス自動車は、当時の皇太子明仁親王が愛用したことから、開発の主要メーカーに選ばれたのです。

開発には多くの企業からの協力がありましたが、プリンス自動車は当時、限られた人員で技術開発に取り組んでいました。最初のリムジン設計は比較的短期間で完成し、1965年から正式に製造が開始されます。

デザインと車体特性

プリンスロイヤルは、同時期のグロリア（3代目 A30型）と共通するデザイン要素を持ちながら、完全にオリジナルなボディを持っています。車体は日本製の乗用車においては最大級で、全高約1.8メートル、しっかりとした造りが特徴です。座席は8名分あり、運転席と乗客席の間には仕切りがあります。室内には高品質な毛織物や耐久性のある革張りが使用されており、最高レベルの快適性を追求した仕上がりとなっています。

機構とメカニズム

プリンスロイヤルのメカニズムは、当時のロールス・ロイスやアメリカ製高級車に見られるような堅実で保守的な設計が施されています。強固なフレーム構造を持ち、乗り心地の良さを重視したサスペンション設計も特徴的です。エンジンは排気量6,373ccのV型8気筒で、日本製乗用車としては最大のものであり、重量級の車体を支える力強さを誇ります。燃料供給は大容量キャブレターに依存し、信頼性と保守性が重視されています。

使用とその後

プリンスロイヤルは昭和天皇や上皇明仁の2代にわたって使用され、長年にわたり日本製リムジンの最高峰として知られていました。しかし、40年近くが経過したことで老朽化が進み、維持管理が難しくなりました。2004年には使用の一時停止が求められ、最終的にはトヨタ・センチュリーロイヤルにその地位を譲ることになります。

現在、1台が昭和天皇記念館で保存されており、日本の自動車製造の歴史を物語る貴重な存在として位置付けられています。プリンスロイヤルは、日本の自動車技術と皇室との関わりを象徴する、特別な車両としての役割を果たしました。

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