日産・S20型エンジン

日産・S20型エンジンの詳細

日産自動車がかつて開発したS20型エンジンは、国内外でのレースシーンにおいて重要な役割を果たした高性能ガソリンエンジンです。1960年代後半から1970年代初頭にかけて、日産のスポーツカーに搭載され、その技術的な特徴や高い信頼性から今も多くの自動車ファンの心に刻まれています。

誕生の背景

S20型エンジンの起源は、プリンス自動車が開発したGR8型エンジンに遡ります。このエンジンは、プロトタイプレーシングカーのR380に搭載されましたが、公道での使用に対応できるように設計が見直され、出力が抑えられた上でのデチューンが行われました。1965年から1966年にかけて、国内ツーリングカーレースではG7型エンジンが使われていましたが、1967年のレギュレーション改正により、性能ばかりが課題となりました。そのため、日産は次期ツーリングカー用として新たなエンジンの開発に着手しました。

1969年、S20型エンジンが誕生し、スカイラインGT-Rに搭載されました。後にはフェアレディZ432/432Rにも使用されることとなりますが、昭和48年の排出ガス規制に適合しなかったため、1973年に製造は終了しました。

スペックと性能

S20型エンジンの基本スペックには、以下の特徴があります。

• - 冷却方式：水冷
• - 動弁機構：DOHC、4バルブ、V型弁配置の直列6気筒
• - 最高出力：160PS（レギュラー仕様では155PS）、回転数は7,000rpm
• - 最大トルク：18.0kgf·m（レギュラー仕様では17.6kgf·m）、回転数は5,600rpm
• - 燃料：有鉛ハイオクガソリンまたは有鉛レギュラー
• - オイル容量：6リットル
• - 乾燥重量：199kg

特筆すべきは、レースでの使用を想定した設計が随所に見られる点です。例えば、シリンダーヘッドは軽量で優れた吸入・熱効率を持つアルミ製であり、ピストンはアルミニウム合金製に加え、排気効率を高めるためのステンレス鋼製エキゾーストマニホールドも採用されています。

特徴と技術

S20型エンジンの設計においては、多くの先進的な技術が取り入れられています。たとえば、カムシャフトの駆動方式はギア駆動とチェーン駆動の二段階構造であり、これにより駆動抵抗と摩耗が抑えられています。また、冷却水の流れを工夫することで、シリンダーごとの冷却の均等化を図っています。このような技術が実現した耐久性の高さは、エンジンが高回転域での運転にも対応できる根底にあります。

さらに、エンジンのオイルフィルターはカートリッジ式が採用されており、これにより油圧の管理が徹底され、エンジンへの潤滑と冷却機能が両立されています。

逸話と開発エピソード

エンジン開発時には、当初「R型」と名付けられる予定でしたが、すでに別のエンジンでその名称が使われていたため、最終的に「S型」が選ばれました。また、S20型には複数のシリンダーヘッドが存在し、スペシャリストによる手作業での精巧な組み立てが行われていました。

当時、エンジンの生産効率はあまり良くなく、1日当たりの生産はわずか4台というもので、エンジン単体の価格は約70万円と高額でした。このような高品質な部品と工夫の数々が、S20型エンジンを名実ともに特別な存在にしました。

最後に

S20型エンジンはその後の自動車エンジン設計に大きな影響を与え、その優れた性能と耐久性から現在でも多くの愛好者に支持されています。2000年代以降も多くのパーツが市場に流通し、オーバーホールも行われるなど、歴史的な存在価値を持つエンジンとして、後世に語り継がれています。

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