日立港

日立港：茨城県日立市の歴史を刻んだ港湾

日立港は、茨城県日立市に位置していた重要な港湾です。古くから港湾として利用されてきた歴史を持ちますが、本格的な商港としての発展は戦後、特に高度経済成長期以降に顕著になります。日立製作所の企業城下町である日立市では、大型発電機などの工場製品の輸送手段として、陸路輸送の限界を克服するため、港湾開発が急務となりました。

日立港では、石油製品、鉱産物、木材、そして自動車などの多様な貨物が取り扱われていました。特に自動車においては、ドイツのダイムラー社からの輸入車が多数搬入され、豊橋港と並んで国内における輸入拠点として知られていました。近年ではフランスのルノー社も利用し、日産[[自動車]]栃木工場からは北米向け輸出拠点としても機能していました。

平成20年（2008年）時点では、年間約1900隻の船舶が入港し、取扱貨物量は500万トンを超える規模にまで成長しました。常磐[[自動車道]]の日立南太田インターチェンジにも近く、東日本全体の物流拠点としての役割を担っていました。隣接する久慈漁港と共に、日立市の経済発展を支える重要なインフラでした。

1976年には、函館空港に緊急着陸したソ連のMiG-25戦闘機をソ連に返還する際にも日立港が利用されました。この出来事は、日立港が国際的な物流拠点として認知されていたことを示す象徴的な出来事となりました。また、港湾地区にはなぎさ公園などのレクリエーション施設も整備され、地域住民の憩いの場にもなっていました。

日立港の歴史：難工事からの発展

日立港の建設は、1957年（昭和32年）6月、久慈商港として釜坂の地で起工されました。大規模で困難な工事でしたが、1959年（昭和34年）10月に日立港と改称し、開港を迎えました。その後、港湾施設の整備が進み、1967年（昭和42年）6月には関税法に基づく開港指定を受け、重要港湾へと昇格しました。1993年（平成5年）には港則法による特定港の指定も受けました。

港湾施設としては、石油製品や石炭などを扱う第1埠頭、工業原料などを扱う第2埠頭、コンテナ船やRO-RO船が着岸する第4埠頭、そして自動車の輸出入を扱う第5埠頭などが整備されました。第4埠頭には、日立港物流センターや日立製作所みなと工場も立地していました。第5埠頭には、東京ガスのLNG基地も設置され、エネルギー供給拠点としての役割も担っていました。2015年には東京ガスのLNG輸入基地が完成し、マレーシアからのLNG輸入が開始されました。

統合と新たな展開

2008年（平成20年）12月、日立港は、常陸那珂港、大洗港とともに茨城港に統合され、茨城港日立港区となりました。独立した港湾としての歴史に幕を閉じましたが、茨城港の一翼を担う重要な港区として、その機能は継続されています。2010年からは、日産[[自動車]]の北米向け乗用車輸出も開始されました。しかし、2011年の東日本大震災では、輸出を待っていた車両が被災するなど、大きな影響を受けました。

日立港は、日立製作所の発展と地域の経済発展を支え、国際貿易にも貢献してきた重要な港湾でした。その歴史と役割は、現在も茨城港日立港区として受け継がれ、地域の未来を担う重要な拠点として存在感を保っています。また、毎年夏には「日立港まつり」が開催され、地域住民の交流の場にもなっています。灯台などの港湾施設も、日立港の歴史を今に伝えています。

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