日羅

日羅（にちら）とは

日羅は、6世紀の朝鮮半島、百済に仕えたとされる人物です。生没年は不明ですが、583年12月に暗殺されたと記録されています。父は火国（肥後国）葦北国造の刑部靭部阿利斯登（ゆげいべのありしと）で、九州出身の武人でした。

生涯と業績

日羅の父、阿利斯登は、宣化天皇の時代に大伴金村に仕え、朝鮮半島に渡ったとされます。そのため、『日本書紀』には、日羅が金村を「我が君」と呼ぶ記述があります。日羅自身は、百済の威徳王から二位達率という非常に高い官位を与えられた倭系百済官僚でした。この高官位は、継体天皇や欽明天皇時代の倭系百済官僚の働きが評価された結果であるという説もあります。

583年、日羅は敏達天皇の要請で日本に帰国し、阿斗桑市に館を与えられました。朝廷に対し、朝鮮半島情勢について奏上しました。その内容は、人民を豊かにし、国力を充実させた上で、船で威を示すことで百済が服従するであろうというものや、百済が九州に領土拡大を企んでいるため、警戒すべきという百済にとって不利な情報でした。

同年12月、日羅は百済の役人である徳爾と余奴によって、難波で暗殺されました。物部贄子と大伴糠手子によって小郡の西畔丘に埋葬され、後に葦北に移葬されたと伝えられています。

伝説と信仰

日羅は、『聖徳太子伝暦』や『今昔物語集』などでは、聖徳太子が師事した百済の高僧であるとされています。また、漢字を日本の国々に広めた人物とも伝えられています。

日羅の墓は、父・阿利斯登のゆかりの地である熊本県八代市坂本町百済来下馬場の百済来地蔵堂前に現存するとされています。『日羅公伝』や『新羅国志』、『百済来村久多良木地蔵堂文書』にもその記述が見られます。また、熊本県津奈木町福浜にも墓があるという伝承もあります。

日羅は、大分県大野川流域や宮崎県などに多くの密教系寺院を開基し、磨崖仏を建立したとも言われています。また、坊津には、龍厳寺（後の真言宗一乗院）を創建したとされ、その名称の起源になったと伝えられています。

『百済来村久多良木地蔵堂文書』によると、光仁天皇の時代、宝亀元年（770年）に、桧前中納言政丸が肥後国を治めていた際、日羅の孫である加津羅を訪ね、釆地を与えたとされています。

日羅を祀る寺院

日羅の名を冠した寺院が各地に存在します。

日羅山金剛院（福岡県那珂川市）
日羅山橋田寺（熊本県菊池市七城町橋田）
日羅山東福寺・観音寺（熊本県宇城市小川町）
日羅山・竜宝山松森寺（宮崎県東諸県郡国富町大字本庄字田尻）

まとめ

日羅は、百済に仕え、日本の朝廷にも影響を与えた人物です。その生涯は多くの謎に包まれていますが、数々の伝説や伝承を通して、その存在は現代にまで語り継がれています。日羅は、単なる歴史上の人物としてだけでなく、信仰の対象としても重要な存在であると言えるでしょう。

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