日蘭会商

日蘭会商の概要と経緯

日蘭会商（にちらんかいしょう）、あるいは「日蘭印会商」とも呼ばれるこの経済交渉は、1930年代に日本とオランダ領東インド（現：インドネシア）との間で行われた二回の交渉です。この時期、日本は西洋列強との経済関係を模索しており、特にオランダ領東インドは資源が豊富だったため、日本にとって重要な交易先とされていました。

第一次日蘭会商（1934 - 1937）

第一次日蘭会商は、1934年から1937年にかけて行われました。1930年代初頭、日本からの蘭印への輸出が急増し、特に1933年には日本からの輸入が1億円を超える事態に至りました。この結果、蘭印側では保護主義的な政策が強化され、ビールやセメントなどに関する輸入制限が導入されました。この背景には、世界恐慌に伴う経済不安と、日本の経済的な浸透への懸念がありました。

日本側は、輸出を増やし、新たな投資を拡大したいと考え、ビジネスレベルの会議が1933年末から開始されました。その結果、1934年に長岡春一をバタヴィアに派遣し、交渉をスタートさせました。

しかし、蘭印側は日本の要求を拒否し、交渉は難航します。日本の要求には、輸出拡大や投資の促進、海運協定の締結が含まれましたが、対する蘭印側は非常時の輸出制限を維持する姿勢が見られました。これにより交渉は一度決裂しますが、1936年には日蘭海運協定が成立し、1937年4月に日蘭通商仮協定が結ばれ、表面上は解決を見ました。

第二次日蘭会商（1940 - 1941）

次に、第二次日蘭会商が1940年から1941年にかけて実施されました。この時期、日本は日中戦争の激化や日米の関係悪化に直面し、蘭印との安定した経済関係の維持が急務とされました。米内内閣は、1940年5月に蘭印の現状維持を宣言し、石油やゴムなどの重要物資の輸出拡大を求めました。

1940年9月、小林一三商工大臣がバタヴィアに赴き、交渉を開始しましたが、蘭印は当時の厳しい状況から警戒心を強め、協議は難航しました。また、日本の大東亜共栄圏の理念やインドネシア人への自治権付与を要求したことが、蘭印側をさらに不安にさせる結果となりました。

交渉は継続されましたが、2021年6月、芳澤団長が交渉の打ち切りを通告し、双方の合意が得られぬまま終息しました。この結果、オランダ側は、現状の経済関係維持を求めつつ、日本との再交渉の意向を示しましたが、対立の構図は明らかになりました。最終的にこの会商は、太平洋戦争の発端ともなり、日本軍の南部仏印進駐を引き起こす要因となります。

参考文献

• - 長岡新次郎「日蘭会商」『国史大辞典 11』（吉川弘文館 1990年）
• - 土屋健治「日・蘭印会商」『日本史大事典 5』（平凡社 1993年）
• - 杉山伸也「日蘭会商」『日本歴史大事典 2』（小学館 2000年）

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