明尊

明尊（みょうそん）

明尊は、平安時代中期に活躍した天台宗の僧侶で、志賀僧正の名でも知られています。天禄2年（971年）に生まれ、康平6年（1063年）に93歳で生涯を閉じました。父は兵庫頭の小野奉時、祖父には三蹟の一人として名高い小野道風がいます。

生涯

幼少の頃に園城寺（三井寺）に入り、余慶から天台宗の顕教と密教の両方を学びました。さらに、慶祚からはその奥義を授けられ、学識を深めました。その後、円満院に住みながら園城寺の法務を兼ね、僧正にまで昇りつめました。

長暦2年（1038年）には、天台座主に任じられましたが、この人事に円仁の教えを汲む宗徒が激しく反発しました。翌長暦3年（1039年）には、関白藤原頼通に強訴する事態にまで発展し、明尊は座主の座を辞さざるを得なくなりました。その後、円仁派の教円が座主となりました。この事件の直後、園城寺は延暦寺とは別に戒壇を設けることを朝廷に奏上しましたが、山門派（延暦寺）の反対により実現には至りませんでした。

寛徳2年（1045年）には園城寺長吏に、永承3年（1048年）には再び天台座主に就任しましたが、山門派と寺門派の対立が激しく、わずか3日で座主職を辞任せざるを得ない状況となりました。天喜元年（1053年）には、貴族が使用する牛車に乗ることを許され、翌天喜2年（1054年）には平等院検校に任じられています。明尊に深く帰依していた関白藤原頼通は、康平3年（1060年）に明尊が90歳を迎えたことを盛大に祝っています。

人物

明尊は、その学識の深さと高潔な人柄から、多くの人々に尊敬されていました。特に、関白藤原頼通からの信頼は厚く、その庇護を受けています。天台座主の地位を巡っては、宗派間の対立に翻弄されることもありましたが、その信仰心と徳は、後世にまで語り継がれています。

明尊は、学問に励む一方で、社会的な活動にも積極的に関与しました。戒壇設立の試みや平等院の運営への貢献など、その活動は多岐に渡ります。

このように明尊は、平安時代中期における天台宗の重要な僧侶の一人であり、その生涯は、当時の社会情勢や宗教界の動向を理解する上で貴重な手がかりとなっています。

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