明治美術会

明治美術会：日本における洋風美術の先駆け

明治美術会は、1889年（明治22年）に設立された日本で最初の洋風美術団体です。工部美術学校の廃校という背景の中、西洋美術の振興を目指し、当時の洋画家たちが結集して誕生しました。

設立の背景と初期の活動

1876年（明治9年）に設立された工部美術学校は、日本で最初の国立美術教育機関として、西洋美術教育のみを行っていました。しかし、財政難と欧化政策への反動から国粋主義が台頭し、1883年（明治16年）に廃校となりました。その後、1889年（明治22年）に東京美術学校が開校しましたが、西洋美術は教育から除外されました。この状況に危機感を抱いた工部美術学校出身の洋画家たちは、同年6月16日に「明治美術会」を結成しました。当時の洋画家のほぼ全員にあたる約80名が参加し、団結しました。

同年10月19日から11月3日にかけて、東京上野公園不忍池畔で第一回展を開催し、浅井忠の「春畝」や松岡寿の「肖像（兵士）」などが展示されました。その後、毎月の例会と春秋の展覧会を開催し、講演会や座談会を通して、歴史的主題の必要性を訴え、歴史上の人物の肖像や事件を描いた作品が多く制作されました。

内部対立と衰退

明治美術会は当初、東京美術学校に対抗する姿勢を持っていました。1892年1月16日には、浅井忠や長沼守敬らを教授として絵画彫刻の教場（のちの明治美術学校）を開設しましたが、1896年に閉校しました。1893年に帰国した黒田清輝が入会すると、政府とのつながりができましたが、黒田がもたらした印象派風の新しい画風は、「外光派（紫派）」と称されるようになり、旧来の（工部美術学校系の）画家たちは「旧派（脂派）」と呼ばれるようになりました。

1896年（明治29年）、黒田清輝らは明治美術会を脱退し、「白馬会」を結成しました。同年、東京美術学校に黒田を中心とした西洋画科が設置されました。1898年（明治31年）には旧派側の浅井忠も同校の教授となりましたが、翌年海外留学となりました。明治美術会は次第に勢力を失い、1901年（明治34年）11月21日に解散しました。

解散後の活動

明治美術会解散後、一部の作家たちは「太平洋画会」を結成し、1902年（明治35年）春に第1回展を開催しました。若手の石井柏亭やフランス留学組の鹿子木孟郎（1904年帰国）、中村不折（1905年帰国）などが太平洋画会に参加し、新たな洋画の潮流を形成しました。

主要なメンバー

明治美術会には、以下のような多くの著名な画家が参加していました。

山本芳翠
本多錦吉郎
川村清雄
五姓田義松
五姓田芳柳 (2代目)
浅井忠
小山正太郎
松岡寿
原田直次郎
黒田清輝
有吉秀太（永地秀太）
森鴎外（名誉会員）
原敬（賛助会員）
益田孝（賛助会員）

まとめ

明治美術会は、日本の洋風美術の黎明期において、重要な役割を果たした団体です。その設立は、工部美術学校の廃止という危機感から生まれ、日本の洋画の発展に大きく貢献しました。内部対立や時代の変化によって解散を余儀なくされましたが、その活動は後の日本の美術界に大きな影響を与えました。

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