明瀬山光彦

明瀬山光彦：努力とユーモアで愛された力士の軌跡

明瀬山光彦（あきせやま みつひこ）は、1985年7月18日生まれ、愛知県春日井市出身の元大相撲力士です。本名を深尾光彦といい、その愛らしい風貌から「みっちゃん」の愛称で親しまれました。現役時代は木瀬部屋（閉鎖中は北の湖部屋）に所属し、最高位は東前頭12枚目。得意技は右四つ。好物は母親手製の煮物、趣味は音楽鑑賞と食べ歩きという親しみやすい一面も持っていました。現在は年寄・井筒として、後進の指導にあたっています。

幼少期から角界入りまで

実家は建材店「深尾タイル」を経営。小学生時代から相撲を始め、「中京クラブ」で1年先輩の市原孝行（後の磋牙司）と出会います。市原を目標とし、小学校4、5年生時にはわんぱく横綱に輝きました。市原とは埼玉栄高校、日大相撲部でも共に切磋琢磨。大学4年で大相撲入りを決意し、市原のいる木瀬部屋へ入門しました。大学3年時には全日本相撲選手権決勝で市原と対戦するも敗れ、「市原超え」はプロの舞台へ持ち越しとなりました。2005年には、ニューヨークで行われた「世界相撲チャレンジ」で優勝しています。

苦労人、明瀬山

2008年1月場所、本名・深尾の四股名で初土俵。入門時の体重は198kg。その巨体からは想像できない素早い動きで序ノ口、序二段を全勝優勝。順調に出世していきました。2009年7月場所では幕下優勝を果たしますが、その後は伸び悩みます。師匠である木瀬親方（元肥後ノ海）から「悔しいか」「だまされたと思って俺の言うこと聞くか」と叱咤激励を受け、自身の相撲を見つめ直しました。そして、「右を取ったら強い」という親方のアドバイスを信じ稽古に励み、新たな強みを確立しました。

額が非常に狭く、大銀杏が結えるか心配されたこともありましたが、2010年7月場所で初めて大銀杏を結いました。同年11月場所、新十両昇進を機に四股名を「明瀬山」に改名。「明」は両親の名前から、「瀬」は木瀬部屋から、「山」は愛知中京クラブのコーチと埼玉栄相撲部監督の名字から取られました。

幕内へ、そして引退

2016年3月場所、新入幕。所要48場所は、学生相撲出身者としてはスロー出世の記録です。会見では木瀬親方への感謝を述べました。しかし、幕内では壁に阻まれ、1場所で十両へ陥落。その後も十両と幕下を往復する日々が続きましたが、2021年1月場所で28場所ぶりに幕内へ返り咲き。35歳6ヶ月での幕内勝ち越しは、戦後2番目の年長記録となりました。同年7月場所、9月場所を怪我で休場。

2023年7月場所後、引退を表明。年寄・井筒を襲名しました。引退会見では「目いっぱい相撲をやったので、悔いはありません」と語り、親方としての抱負を述べました。2024年6月には断髪式が行われ、多くの関係者に見送られました。2020年に結婚し、2021年11月に長男が誕生していたことも公表されました。

取り口と人物像

元々は突き押し相撲を得意としていましたが、木瀬親方との二人三脚で右四つ速攻相撲へと転向。晩年は老獪さも身につけました。普段は人懐っこい性格で、年下からもツッコミを受けるほど。アニメ好きとしても知られています。

エピソード

小学生時代、相撲料理店「栃光」のCMにエキストラとして参加。
わんぱく横綱時代、後の師匠となる北の湖から土俵入りの指導を受ける。
締め込みは父親が栽培するナスにちなんだナス紺色。
ステイホーム期間中は『あつまれ どうぶつの森』をプレイ。

明瀬山光彦は、そのユーモラスなキャラクターと、諦めない心で多くのファンに愛された力士でした。これからは親方として、土俵を彩る力士を育ててくれることでしょう。

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