星をつかみそこねる男

星をつかみそこねる男

『星をつかみそこねる男』は、漫画家・水木しげるが新選組局長「近藤勇」の生涯を独自の解釈で描いた歴史漫画作品です。1970年10月から1972年10月まで『月刊漫画ガロ』にて連載されました。編集担当は、当時ガロの編集長であった南伸坊が務めました。

概要

作者である水木しげるは、1959年頃から東京都調布市に在住しており、偶然、近藤勇の墓がある竜源寺を発見したことをきっかけに、幕末という時代背景や人々の暮らしに想像を膨らませ、本作の執筆に至ったとされています。連載当時は、掲載誌であった青林堂の経営状況が悪く、原稿料が支払われない状況が続いていました。しかし、連載終了後に虫プロ商事から単行本が刊行され、ようやく収入を得ることができたという逸話も残っています。その後、新人物往来社や講談社からも刊行され、現在ではちくま文庫や水木しげる漫画大全集で読むことが可能です。

あらすじ

物語は、浪士募集に騙されて京都へとやってきた近藤勇たちが、時代の波に巻き込まれ、いつしか佐幕派の有名人になっていく様子を描いています。しかし、時代は新選組にとって不利な方向へと進んでいき、彼らの運命は「星をつかみそこねる」方向へと向かっていきます。

主な登場人物

近藤勇：本作の主人公であり、新選組の局長。天然理心流・試衛館の近藤周助の内弟子となり剣術を学びますが、当初は時勢に疎く、「攘夷」と「どじょう料理」を間違えるほどでした。しかし、山南敬助との出会いをきっかけに、日本外史や漢学を学ぶようになります。その後、試衛館の生活が困窮したため、清河八郎の浪士募集に応じ、京へと旅立ちます。
土方歳三：近藤勇の古くからの知人であり、試衛館へ入門します。各地で剣術修行を積んでいましたが、自身の力不足を痛感しており、近藤の仲介で試衛館に入門します。京では新選組副長として活躍します。
原田左之助：腹に切腹の傷跡があり、「死損ね左之助」と呼ばれています。役人と揉めていたところを近藤に諭されたことをきっかけに試衛館へ入門します。大食漢で、4人前を平らげるのが日常です。近藤らと共に新選組の中心人物として活躍します。
山南敬助：近藤、土方らが浦賀で黒船を見学中に知り合い、近藤の人柄に惹かれ試衛館に出入りするようになります。新選組では参謀を務めますが、考え方の違いから脱走を企て、失敗に終わります。
沖田総司：夜中に咳き込んでいるところを近藤に助けられ、そのまま試衛館に居候することになります。剣術の腕前は非常に高く、この頃から既に多くの人を斬ってきた太刀筋を持っていたとされています。近藤らと共に新選組で活躍し、山南の介錯を務めます。
芹沢鴨：清河八郎の浪士募集に参加し、近藤らと知り合います。新選組局長となりますが、その横暴な振る舞いから近藤一派に暗殺されます。
伊東甲子太郎：北辰一刀流の道場主で、新選組内で勢力を増していきます。御陵衛士を結成しますが、近藤一派によって暗殺されます。伊東の遺体は、伊東一派をおびき寄せるために路上に放置されました。
近藤周助：天然理心流「試衛館」の道場主であり、近藤勇の養父。道場荒らしが現れると、他の道場から人手を借りて凌いでいました。
小六：試衛館時代から近藤らに仕えている下男。新選組結成後も京都まで同行し隊員たちの世話を焼きます。池田屋事件では乞食に扮して密偵の役割を果たしました。最後まで新選組に尽力し、近藤勇の処刑後はその首を捜し求める旅に出ます。

関連作品

水木しげるが新選組を題材にした漫画作品は、本作の他にも以下の作品があります。

『沖田総司』（1978 - 1979年、週刊実話）
『沖田総司　他　付四コマ漫画』（講談社〈水木しげる漫画大全集〉、2014年6月）

単行本

『劇画近藤勇　星をつかみそこねる男』（ちくま文庫、1989年7月）
* 『星をつかみそこねる男』（講談社〈水木しげる漫画大全集〉、2016年1月）

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