川内川

川内川：九州を潤す大河の歴史と魅力

川内川（せんだいがわ）は、熊本県最南部、宮崎県南西部、そして鹿児島県北西部を流れ、東シナ海へと注ぐ一級河川です。九州地方においては、筑後川に次ぐ第二の規模を誇り、その流域は豊かな自然と歴史、そして人々の生活を育んできました。

名称の由来

川内川の名前は、下流部の地名である「川内」に由来します。「川内」という地名は、古くは「千臺」「千代」「千台」などとも書かれていましたが、その語源にはいくつかの説があります。

神話に由来する説: ニニギノミコトが「千の台」を作るように命じたという神話が、地名の由来になったとする説。
地理的要因に由来する説: 川内川の北側（内側）に薩摩国の国府や国分寺が置かれていたことから、川の北側を「川内」、南側を「川外」と呼んでいたとする説。

川の流れと流域

川内川は、九州山地の白髪岳（標高1417m）南麓に源を発し、南へと流れます。熊本県から宮崎県へと入り、加久藤盆地を西に横断。その後、鹿児島県に入り、湧水町栗野で再び西へ流れを変え、大口盆地を潤します。伊佐市からは概ね南西方向に流れ、薩摩川内市の西方で東シナ海へと注ぎます。

河口付近には、九州電力川内原子力発電所が立地しています。かつて存在した火力発電所の川内発電所は2022年（令和4年）に廃止されました。

鹿児島県内の流域は、県内有数の米作地帯であり、伊佐市菱刈では金鉱山も存在します。

川内川と人々の暮らし

川内川は、その豊かな水資源を通じて、人々の生活を支えてきました。

農業: 江戸時代から、加久藤盆地や菱刈平野などでは、川内川の水を利用した灌漑が行われ、稲作を中心とした農業が発展しました。また、宮之城〜鶴田間では上納米を運搬するために川が開削され、菱刈では人工河川が建設されたとされています。
水運: 川内川は、かつては物資の輸送にも利用されていました。
地域文化: 川内川が流れる神子地区では、「光に満ちたまちづくり（ホタルとともに）」という活動が評価され、手づくり郷土賞を受賞しました。また、さつま町二渡地区では、初夏に木製の川舟「ホタル舟」が運航されてきましたが、ホタルの減少や船頭の高齢化により、2023年で終了しました。

川内川の歴史

川内川には、歴史と文化が深く刻まれています。

江戸時代: 河口付近では干拓が行われ、延宝7年（1679年）から貞享4年（1688年）にかけて、川内川の堤防として「長崎堤防」が建設されました。この堤防は、治水のために鋸の刃型に構築されており、その点が評価され、2011年（平成23年）に土木学会選奨土木遺産に指定されました。
明治時代以降: かつては婚礼船の文化も残っていましたが、1941年（昭和16年）には川内市付近で婚礼船が転覆し、新婦の親子ら7人が死亡する事故が発生しています。

近代における災害と治水

川内川は、その豊かな恵みをもたらす一方で、洪水などの災害も引き起こしてきました。そのため、古くから治水対策が行われてきました。

鶴田ダム: 1966年（昭和41年）には、河口から51Kmの位置に鶴田ダムが竣工し、洪水調節に役立っています。
水害の歴史: 過去には、1954年、1969年、1972年、1989年、1993年、1997年など、流域でたびたび水害が発生しています。特に、平成18年7月豪雨では、2,347戸が浸水する大きな被害が発生しました。
激特事業: 平成18年7月豪雨の被害を受け、2006年（平成18年）度から2010年（平成22年）度にかけて、直轄河川激甚災害対策特別緊急事業（激特事業）が実施され、分水路の建設や堤防の強化などが行われました。
近年: 2021年（令和3年）7月には、平成18年7月豪雨に匹敵する大雨が降り、小規模な法面崩壊や支流の氾濫が発生しました。

流域の自治体

川内川が流れる主な自治体は以下の通りです。

熊本県: 球磨郡あさぎり町
宮崎県: えびの市
鹿児島県: 姶良郡湧水町、伊佐市、薩摩郡さつま町、薩摩川内市

主な支流と橋梁

川内川には、多くの支流と橋梁があります。

主な支流: 銀杏木川、小倉川、麦之浦川、高城川、隈之城川、平佐川、田海川、樋渡川、樋脇川、山田川、穴川、羽月川、十曽川、綿打川、長江川など。
主な橋梁: 狗留孫大橋、坂下橋、小牧橋、麓橋、石氷橋、前田橋、川鶴橋、池島大橋、加久藤橋、新加久藤橋、榎田橋、川内川橋（九州自動車道）、湯田橋、上真幸橋、真幸橋、下真幸橋、亀沢橋、鶴丸橋、中鶴橋、吉松橋、柿木橋、永山橋、船渡橋、栗野橋、勝栗大橋、轟橋、山下橋、鵜泊橋、荒瀬橋、湯之尾橋、出口橋、鵜木橋、森山橋、荒田天神橋、江川橋、下手橋、下殿橋、新曽木大橋、ホタル大橋、神子橋、新湯田橋、柏原橋、とどろ大橋、宮都大橋、宮之城橋、鴛鴦橋、山崎大橋、山崎橋、久住橋、倉野橋、東郷橋、白浜橋、天大橋、川内川橋梁（九州新幹線）、川内川橋梁（肥薩おれんじ鉄道）、太平橋、開戸橋、川内川大橋、川内河口大橋など。

流域の観光地

川内川流域には、豊かな自然や温泉、歴史的な建造物など、多くの観光地があります。

主な観光地: 狗留孫峡、えびの高原、京町温泉、湯之尾温泉、宮之城温泉、湯之尾滝、曽木の滝、祁答院家住宅、北薩広域公園など。

並行する交通

川内川には、鉄道や道路が並行しています。

鉄道: JR九州肥薩線、JR九州吉都線、肥薩おれんじ鉄道。
道路: 国道221号、国道267号、国道268号、九州自動車道、宮崎自動車道。

川内川を名称の由来とするもの

川内川は、艦艇の名前にも使われています。

川内 (軽巡洋艦): 大日本帝国海軍の川内型軽巡洋艦の1番艦。
せんだい (護衛艦): 海上自衛隊のあぶくま型護衛艦の4番艦。

関連項目

川内川花火大会: 川内川下流部の薩摩川内市で行われる花火大会。
* ガラッパ: 川内川に出没するとされている妖怪。


川内川は、その豊かな恵みと歴史の中で、これからも人々の暮らしを支え続けるでしょう。

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