景山粛

景山粛（かげやま しゅく）

景山粛は、安永3年（1774年）に生まれ、文久2年5月3日（1862年5月31日）に没した江戸時代後期の医師、儒学者、教育者です。号は仙嶽（せんがく）、通称は立碩（りゅうせき）と称しました。

生涯

景山粛は、伯耆国会見郡中野村（現在の鳥取県境港市中野町）の農家に生まれました。叔父である木島義春の養子となり、木島家を継承しました。義春もまた、智正（ともまさ）と称し、立碩と号して医学を京の木島氏に学んだ名医でした。

文化年間には、京都の服部大方に師事し、医学を修めました。帰郷後は、医業を行う傍ら、私塾を開いて子弟の教育に尽力しました。その評判は伯耆国一円に広がり、出雲国や隠岐国からも塾生が集まるほどでした。

景山粛の私塾からは、景山龍造、門脇重綾、佐善元立、松本古堂、今小路範成、富田織部など、幕末・維新期に活躍した多くの志士が輩出されました。これらの塾生たちは、日本の近代化に大きく貢献しました。

文久2年（1862年）に没し、戒名は僊岳院大圓高徳居士（せんがくいんだいえんこうとくこじ）です。墓は境港市中野町の正福寺北側にある景山家の墓地にあります。

景山家について

景山家（旧姓：蔭山）は、境港市中野町に多い фамилия で、同族が近隣に多く存在します。景山氏は、尼子氏の遺臣である景山道観の末裔と伝えられています。郷土資料によると、元々は「蔭山」という фамилия だったものを、11代目の義春から「景山」に改めたとされています。

初代の木島立碩（景山義春）は、長三郎の子として生まれ、京都の木島氏に医学を学びました。木島を фамилия としたのは、師の指示によるものでした。義春には実子がなかったため、甥である粛を養子に迎えました。粛は文化年間に京都の服部大方に学び、帰郷後、文政の頃から医業の傍ら私塾を開き、子弟を教育しました。

粛の子である龍造は、江戸の梁川星巌に学び、京都の三条実万に仕え、後に鳥取藩の学館教授となりました。景山塾出身の志士たちと共に、激動の維新史に大きな足跡を残しました。龍造の長男である道遠は、明治5年（1872年）に境郷校が開設された際に初代校長を務め、明治8年（1875年）には皇漢学所の教授となり、明治10年（1877年）に京都府師範学校へ転任、明治12年（1879年）に帰郷しました。

人物像

景山粛は、中野村の自宅で診療を行っていましたが、景山家はかなりの地所を持つ裕福な家柄でした。治療に関しては、薬代などの報酬を強要することはなく、患者の気持ちに任せていたと言われています。また、普段は医療と教育に多忙な日々を送っていましたが、頼まれれば夜中でも書を講じるなど、仕事にも教育にも熱心かつ勤勉に取り組んでいました。

史料

初代木島立碩の墓碑には、粛が養父のために刻んだ「先考石碑銘并序」が残されています。また、「影山日記」や「家譜・景山道遠家」などの史料も、景山家の歴史を伝える貴重な資料となっています。

参考文献

『境港市史 上巻』昭和61年、418-432頁
『境港市史 下巻』昭和61年、165-169頁

関連人物

池淵家
門脇重綾
佐善元立
松本古堂
今小路範成
富田織部

外部リンク

とっとりデジタルコレクション--景山粛
市指定文化財　景山家墓地

もう一度検索