景福丸

景福丸（けいふくまる）

景福丸は、鉄道省が運航する関釜航路と青函航路の鉄道連絡船の一隻であり、特徴的なデザインと優れた性能を持つ船です。この船は、1922年に三菱重工業神戸造船所にて建造され、同年に就航しました。姉妹船には、徳寿丸や昌慶丸があります。景福丸型客船の歴史は、旧朝鮮時代の王宮景福宮に由来しており、その名は国の重要な文化的遺産から受け継がれました。

航跡と就航

1913年には関釜連絡船として「高麗丸」と「新羅丸」が就航し、その後の旅客増加を受けて新たに3隻の船が建造されることが決定。景福丸はその中で最初に完成した船として、旅客輸送の一翼を担うことになりました。この船は、当時の技術を駆使して建造され、特に優れた高速性を誇りました。主機には、4,010SHPのタービンが2基搭載されており、高速力を実現しています。姉妹船である昌慶丸は、公試運転で20.49ノットを記録し、その性能の高さが印象的です。

景福丸の就航により、下関と釜山との間の航行時間は大幅に短縮され、昼間で8時間、夜間で9時間に短縮されました。この改善は多くの乗客の利用を促進し、両国間の交通の便を大いに向上させました。

連絡船としての運用

景福丸は、関釜航路での運行に留まらず、特別な任務を担ったこともあります。1922年には、イギリス皇太子の遊覧船として瀬戸内海を航行しました。また、関東大震災時には、被災者や救援物資の海上輸送を担当しました。このように、景福丸は単なる旅客船以上の役割を果たし、重要な時期に活躍したのです。

1938年には、姉妹船の徳寿丸との接触事故により、海上での危険を伴う状況も経験しましたが、乗客の安全は保たれました。この事故後も、景福丸は関釜航路や博釜航路で運営され続け、1945年の機雷封鎖までは運航を続けました。

終戦後の運用

終戦後、景福丸はGHQの管理下に置かれ、青函航路へ転属されました。その後も運航を続けたものの、1949年に定期運航を終了し函館に係留されました。ここでの役割は海上ホテルとしての利用に転じ、1950年に開業しました。この海上ホテルは、戦後の混乱期における福祉事業としての側面を持ち、かつての船員や解雇者の雇用を促進するために設立されたものでした。

ホテルとしての設備は、和室5室、洋室14室を備え、定員は46名の一般客や280名の団体客を収容可能でした。しかし、船体の老朽化と維持費の増大により、1956年には休業を余儀なくされました。その後、1958年に解体されることになりましたが、船体は函館港の造成時に埋められました。

海上ホテルの休業後、鉄道弘済会は函館駅の近くで「景福ホテル」として旅館業を再開し、その後はハーバービューホテルの建設など、地域の発展とともに変遷を遂げていきました。

まとめ

景福丸は、鉄道連絡船としての役割を果たすとともに、特別な任務や海上ホテルとして地域社会に貢献した歴史に名を刻む船です。多くの人々の思い出に残る存在であり、函館の文化においても重要な位置を占めています。

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