曙立王

曙立王について

曙立王（あけたつのおおきみ）は、古代日本の神話や歴史を記した『古事記』に登場する人物です。彼は大俣王の子であり、兄弟には菟上王がおります。また、開化天皇の子である彦坐王の孫ともされ、重要な皇族の一員です。曙立王は伊勢地方に関わりが深く、伊勢の品遅部や伊勢の佐那造の始祖とされています。

三重県多気郡多気町には、彼を祀る式内社・佐那神社が存在しており、そこでは天手力男神とともに曙立王が尊ばれています。

役割と伝説

『古事記』によれば、曙立王は唖の本牟智和気王（誉津別命）が呪いを解くために出雲国へ向かう際の伴侶として選ばれました。この決定は占いによって導かれ、曙立王は「うけい」と呼ばれる儀式を行います。この儀式の中で、地に落ちて死んだサギが蘇り、さらに枯れた甘橿丘の樫の樹も復活しました。

この出来事を受けて、垂仁天皇は曙立王に長い名前を与え、その名は倭者師木登美豊朝倉曙立王（やまとはしきとみとよあさくらの あけたつのおおきみ）です。これは「大和の磯城・鳥見・朝倉の曙立王」という意味であり、曙立王の名声とその神聖な役割を象徴するものです。

伊勢の佐那造との関係

曙立王が唖の皇子の伝承と結びついている背景には、伊勢の佐那造が語り継いでいることが影響していると考えられています。伊勢地域は古来より水銀の産地として名高く、研究者の尾畑喜一郎によれば、佐那造は古代の水銀採掘に関わった人々である可能性が高いとされています。気化した水銀を長期間吸い込んだことが、喉の疾患を引き起こし、これが誉津別命と曙立王にまつわる伝説に結びついたとされています。

また、著名な民俗学者の谷川健一は、『日本書紀』第六巻に登場する「天湯河板挙」と鍛冶の氏族との関連性について言及し、曙立王の名が金属精錬の実態を反映していると指摘しています。

脚注と関連項目

曙立王に関する情報や伝説は多岐にわたりますが、彼に関連する重要な名称や伝承には、丹生鉱山、狭穂姫命、山辺大鶙、鳥養部、大国主神などがあります。これらは日本の歴史や神話の中で重要な役割を果たしており、いずれも興味深い背景を持っています。曙立王は、まだまだ多くの謎と魅力に包まれた人物であり、今後の研究が期待されます。

もう一度検索