曹寅

曹寅の生涯と業績

生涯の概要

曹寅（そう いん、1658年 - 1712年）は清朝初期の政治家、文人、そして著名な蔵書家、出版家として知られています。彼の字は子清、号は楝亭（れんてい）で、家族には父の曹璽や叔父の曹爾正、異母弟の曹荃などがいます。特に従弟の曹霑（曹雪芹）は、小説『紅楼夢』の作者として名を馳せており、この家族の文化的影響は計り知れません。

曹家は内務府包衣正白旗に属しており、その祖籍は北方にありますが、代々南京の江寧織造としての地位を築いていました。曹寅の実母は顧氏であり、嫡母である孫氏は康熙帝の乳母でした。曹寅は康熙帝の寵臣として重用され、通政使にまで昇進しました。康熙帝が江南を巡る際には、何度も織造署が行在所として利用される栄誉に輝くこととなります。

しかし、彼の死後、猶子である曹顒が1715年に亡くなり、その後、曹荃の子で曹頫が家業を継ぎました。ところが、康熙帝の死後、雍正帝の即位に伴い、曹家は政治的に疎まれ、公金の接待費不足によって家産を没収される事態に発展しました。曹頫の子孫である曹雪芹もまた、この苦境に巻き込まれることとなります。

出版物と著作

曹寅の業績は特に出版活動において顕著です。1705年には揚州詩局という出版局を設立し、康熙帝の勅撰による『全唐詩』の刊刻を行いました。また、『佩文韻府』の刊刻作業も手掛けましたが、彼の死によって未完成のままとなりました。

彼の編纂した『楝亭五種』は、宋代の字書や韻書の集合であり、具体的には『大広益解玉篇』や『広韻』、『附釈文互注礼部韻略』、『集韻』、そして『類篇』が含まれています。さらに、叢書『楝亭十二種』には『録鬼簿』などの文学や芸術に関する書物が収められています。詩集としては『楝亭詩鈔』が存在し、彼の文学的な感性を反映しています。

特に興味深いのは、周汝昌が『紅楼夢』第54回で言及されていることをもとに、戯曲『続琵琶』が曹寅の作である可能性を提起したことです。この作品は蔡文姫と曹操を主人公とするもので、一部が現存しているものの、その真贋については議論が続いています。

まとめ

曹寅は清初の文化と文学に大きな影響を与えた人物であり、その業績は今なお評価されています。彼の家族が残した文化的な財産は、中国文学の発展において重要な役割を果たしています。

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