最上川さみだれ大堰

最上川さみだれ大堰について

最上川さみだれ大堰（もがみがわさみだれおおぜき）は、山形県東田川郡庄内町と酒田市にまたがり、一級河川である最上川本流の下流部に位置しています。その場所は河口から28.3キロメートルの地点で、この堰は国土交通省東北地方整備局によって管理されています。主な目的は、庄内平野への灌漑を実現するための水供給を確保することであり、可動堰として設計されています。

この堰の特筆すべき点は、ゴムを材料とした水門を用いていることです。空気を注入することでゴムが膨張し、水位を調整することができるこの仕組みは、ラバーダムとして知られています。また、最上川さみだれ大堰は、日本国内においてラバーダム型式の堰の中で最大規模を誇ります。

歴史的背景

庄内平野の灌漑は1596年にさかのぼります。上杉景勝の重臣である甘粕景継が、最上川の右岸に「大町溝」を建設し、新たな農地の開発を行いました。その後、最上義光の治世においても灌漑事業は続けられ、1612年には北楯大堰が建設されるなど、取水堰が次々と設置され、庄内平野は豊かな穀倉地帯へと成長していきました。

明治時代に入ると、ポンプを利用した取水が普及しましたが、ポンプの設置過多が取水量の減少につながるという問題が発生しました。その後は、「国営農業水利事業」が全国で計画され、最上川水系でも整備が進められました。1968年には、「国営最上川下流右岸農業水利事業」が開始され、取水口の整備が行われましたにも関わらず、渇水が続きました。1973年から1985年にかけての干ばつによって水量が急激に減少し、正常な取水ができなくなる事態が続きました。

この流域の問題を克服するため、1987年に「最上川中流堰建設計画」が開始され、最上川さみだれ大堰の建設が進められました。1989年に工事が始まり、堰は1995年に完成しました。その際、堰の名称は松尾芭蕉の「奥の細道」に由来する「さみだれ大堰」に改められました。

構造と特性

最上川さみだれ大堰は、農業用水の安定供給と新たな農地の灌漑を可能にするために設計されています。特に、草薙頭首工や最上川頭首工からの取水が安定するよう、様々な工夫が施されています。この堰は、農繁期においては水位を高く保ち、農閑期には水位を下げるという調整が行われており、このための仕組みが非常に効率的だと言えます。

日本最大級のラバーダムとしての特徴は、ゴムの特性を最大限に活用した点です。具体的には、堰内部の空気を調整することで水位を変動させ、鋼製の水門に比べてコストを大幅に削減しています。高さ約2.7メートルに膨張することが可能であり、通常は河床と同じ高さとなり、訪れる者に橋のような印象を与えます。

観光資源

最上川さみだれ大堰周辺には、魚道が設置されており、さまざまな魚が遡上できるようになっています。その中にはイワナやアユなどが含まれ、特に右岸側には「フィッシュギャラリー」という観察施設があり、来場者は魚道を遡上する魚たちを間近で観察できます。この施設は1998年に開館し、観光名所としての役割を果たし、来場者数も年々増加しています。

最後に、最上川さみだれ大堰は、周辺地域の新たな観光地としての注目を集めており、歴史や自然を感じながら多くの人々が訪れることが期待されています。近年は、清川地区が清河八郎の故郷であることや風力発電施設の建設など、多様な観光資源を持った地域として成長しています。

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