月泉良印

月泉良印（げっせんりょういん）

月泉良印（1319年 - 1400年）は、南北朝時代に活躍した曹洞宗の僧侶です。能登国總持寺で峨山韶碩に師事し、「峨山二十五哲」の一人として、奥羽地方における曹洞禅の普及に大きく貢献しました。

生涯

月泉良印は、元応元年（1319年）に陸奥国本吉郡階上（現在の宮城県気仙沼市波路上）で生まれたとされています。熊谷氏を本姓としていました。

能登国にある總持寺で、道元禅師から数えて4代目の法孫にあたる峨山韶碩（總持寺2世）に師事し、禅の修行に励みました。

正平4年/貞和5年（1349年）には、出羽国秋田郡に補陀寺を創建しました。この補陀寺は總持寺の直末として「東奥の小本山」または「東北の中本山」とも称される名刹となり、出羽北部の曹洞宗発展の基礎を築きました。室町時代に入ると、安東氏からの手厚い保護を受け、隆盛を極めました。

正平16年/康安元年（1361年）には、陸奥国胆沢郡（現在の岩手県奥州市水沢黒石町）にある正法寺の2世となりました。正法寺は、峨山韶碩の高弟である無底良韶が、地元の豪族である長部重義・黒石正瑞の支援を受け、天台宗の古刹であった黒石寺奥の院に曹洞禅の道場を建てたのが始まりです。總持寺の末寺として75石の黒印を受け、七堂伽藍が立ち並ぶ壮大な寺院となり、「奥の正法寺」として知られました。

無底良韶の没後、峨山韶碩の命により、月泉良印が正法寺の2世となりました。彼は總持寺の住持になることを望まず、師の命に従い正法寺に入り、39年間にわたり住持として門弟の教育に尽力しました。正法寺は、崇光天皇の綸旨により、永平寺・總持寺に次ぐ曹洞宗の第三本山と認められ、月泉良印が在職中の1362年には、奥羽両州における曹洞宗の本寺となることが許されました。

月泉良印の時代に、曹洞宗は正法寺を中心に奥羽地方全域に広がり、現在の千葉県や埼玉県など東国各地にまで末寺が開かれたと伝えられています。その数は500とも1000とも言われています。正法寺には、1世の無底良韶、2世の月泉良印、3世の道叟道愛の木像が安置されており、いずれも14世紀後葉から末葉にかけて制作されたものです。

月泉良印は「月泉四十四資」と言われるほど、多くの高僧・名僧を育成しました。その門下には、定山良香、補陀寺2世で秋田郡に正応寺を開いた無等良雄、雄勝郡宝泉寺・平鹿郡満福寺・磐井郡願成寺を開いた梅栄元香（正法寺8世）、由利郡永伝寺を開いた霊翁良英、山北大慈寺を開いた鳳翁正金などがいます。特に、無等良雄は、かつて建武政権で要職にあった万里小路藤房であるという説も存在します。

また、遠く関東地方の武蔵国秩父郡に廣見寺を開いた天光良産も、月泉良印の門下の一人です。

このように、月泉良印は、奥羽地方における曹洞宗の発展に大きく貢献し、多くの優れた禅僧を育てたことで、その名を歴史に刻んでいます。

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