月菴宗光

月菴宗光（げつあん そうこう）

月菴宗光（1326年 - 1389年）は、室町時代に活躍した臨済宗の僧侶です。正中3年（1326年）に美濃国恵那郡遠山荘（現在の岐阜県恵那市）で大江氏の一族として生まれました。

生涯

1340年、遠山荘の大圓寺（現在の岐阜県恵那市岩村町）に入り、峰翁祖一に師事しました。その後、京都の等持院で古先印元や夢窓疎石に、さらに南禅寺で竺仙梵僊に学びました。竺仙が鎌倉の建長寺に移ると、侍香を命じられました。

1351年、大圓寺に戻り、再び峰翁祖一に仕えました。1356年から1361年の間に、摂津国須磨（現在の兵庫県神戸市須磨区）に禅昌寺を開山。1361年には、伊予国八反地（現在の愛媛県松山市）の宗昌寺にて大蟲宗岑の法を嗣ぎました。

1367年秋、但馬国黒川（現在の兵庫県朝来市生野町黒川）に雲頂山大明寺を開創。その後、一時衰退していた天台宗の大同寺（現在の兵庫県朝来市山東町早田）を臨済宗の寺院として再興しました。1373年には筑前国宗像（現在の福岡県宗像市）に承福寺を開山。同年、伊予国上難波（現在の愛媛県松山市）に河野通定の開基にて最明寺を中興しました。1376年には摂津国（現在の兵庫県神戸市長田区）に福聚寺を開山しました。

1389年、但馬国の守護である山名時義・常熈父子が月菴に円通寺の創建を依頼し、同年3月22日に但馬の大明寺で64歳で亡くなりました。没後の1406年、山名常熈の請願により後小松天皇から正続大祖禅師の諡号が贈られました。

逸話

大明寺の境内には球形の石があり、これはもともと寺の北西、溪水のそばにありました。月菴はこの石の上で昼夜座禅を組んだとされ、「坐禅石」と呼ばれています。後に黒川ダム建設のため水没を避けるために大明寺に移されました。

また、地元には次のような伝承があります。当時、黒川周辺では狼の被害に悩まされていました。ある日、座禅中の月菴の傍に老狼が現れ、口に刺さった魚の骨を抜いてほしいと頼みました。月菴がこれを取り除いてやると、狼は感謝の印に稲穂を献上しました。この稲穂を種籾にして米を作ったところ、黒川郷は豊作に恵まれたと言われています。この出来事にちなんで、黒川の米で餅を作り供養する「とげぬき御供」という行事が今も行われています。

教え

月菴は「即心是仏」を説き、「後世の成仏」を願ったり、「有相の仏」を求めることを戒めました。「我心すなわち仏なりと信じる」ことで、この身のまま仏となれると教えました。この思想は、世阿弥の能楽論『花鏡』にも影響を与えており、「生死去来　棚頭傀儡　一線断時　落々磊々」という偈が引用されています。これは、操り人形が糸が切れると動かなくなるように、芸能も演者の心が大切であることを説いています。

法嗣・法孫

法嗣: 大有理有
法孫: 笑堂常訴

参考文献

横山住雄『中世美濃遠山氏とその一族』岩田書院、2017年、p95-96

関連リンク

『岩村町史』 9.大円寺（明覚山） - WAIP（国立国会図書館）

脚注

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